『-one-』

公認彼氏 P15


 頬杖をつきながら陸はムッとした表情を浮かべたと思ったら手を伸ばしてムギュッと私の鼻を摘んだ。

「何度言ったら分かるの? 麻衣の存在が邪魔になるような事は絶対にない。どうして俺を信じてくれないの?」

「らって…」

 陸は摘んだ鼻を左右に揺らしてから指先でピンッと鼻の頭を弾いた。

(もう…痛いのに…)

 鼻の頭を撫でながらも陸の言いたい事はよく分かるから何も言い返せなかった。

「だけど…優しい麻衣が俺を想ってしてくれた事だから許してあげる」

「り〜くぅ」

 嬉しくなって陸に抱き着こうと手を伸ばすと片手を上げて制止された。

 まだ厳しい表情を浮かべている。

「……で、年上が好きなの?」

「それは…」

「じゃあ…俺以外に年下と付き合った事は?」

「………」

 沈黙が答えになった。

 年齢の事など気にしていないように見えて陸は誰よりも年下だという事にコンプレックスを抱いていた。

 それは今まで麻衣と同い年や年上の男が現れるとはっきりと敵愾心を露わにしてきたから嫌というほど知っている。

 確かに陸と出会った時は八歳も年下と付き合うなんてと二の足を踏んだけれど今は後悔はしていない。

 それよりも陸の時々見せる頼もしい姿を見ているととても年下とは思えない事だってある。

「年齢とかに関係なく私は陸が好きだよ」

 その言葉に偽りは無い。

 陸もそれは分かっているのか小さく頷いたがまだ何か納得いってないらしく難しい顔をしている。

 私はまだ陸が怒っている本当の理由を知らなかった。

「別にいいんだよ? 麻衣があの子達に嘘をついてもたとえ年下が好きじゃなかったとしてもね」

「だからっ…」

(年齢は関係ないって言ってるのに…)

 そう伝えたかったのに陸は続きを話させてはくれなかった。

「確かにそれはすげぇショックだったよ。でも麻衣はそれよりも酷いことを俺にしてるだろ?」

 何の事を言われているのかさっぱり分からなかった。

 陸に言えないようなやましい事をした憶えも隠し事もしていない。

 一体私が何をしたと言うのだろう。

「分からないんでしょ」

「う…うん」

 呆れた口調で言われて素直に頷くと陸は「やっぱりね」と言いながらため息をついた。

 それから体を起こした陸はベッドの上で胡坐を掻いた。

「麻衣はどうして俺の事を誰にも紹介しないの?」

「えっ?」

 思いもよらなかった言葉に私は目をパチクリさせた。

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