『-one-』
公認彼氏 P11
だからといってここで私が「八歳年下と付き合ってまーす」なんて言おうものなら彼女達の事だからさらに追及してくるに決まっている。
もうこれ以上話を続けたくなかった私は仕方なく口を開いた。
「そ、そう…年上なの。だから今日はもう…今度ゆっくり話すから…ね?」
(お願い! これで何とか諦めて…)
胸の中で手を合わせながら三人の反応を待った。
「やっぱりねぇ! じゃあ今度じっくり白状させちゃいますからねっ」
「う、うん…」
(良かった…)
まだ聞き足りないみたいだがどうやら納得してくれたらしく私はホッと胸を撫で下ろした。
あとは適当に切り上げて早く帰ろう。
そう思っていた所へ隣から呟くような声が聞こえて来た。
「年上……の彼氏?」
微かに震えた声に慌てて横を向いた。
どうやら話の成り行きを一番気にしていたのは陸だったらしく最後の私のセリフを真に受けて一人放心状態だった。
力なく呟くその顔は血の気が引いて目の焦点が合っていない。
(どうして…そこ信じるかなぁ)
事態は想定外の方へと進み始めていた。
「あ、あの…化粧室に案内は?」
けれど陸の耳には私の声が届かないみたいで無反応だった。
いつもと様子の違う陸に気が付いた三人は互いに顔を見合わせている。
(どうしよう…このままじゃ…)
店のみんなや誠さんには迷惑をかけたくないけれどどうしていいか分からずにいると悠斗くんが立ち上がった。
「陸さん、いつまで麻衣さんを待たせてるんですか?さぁご案内お願いします」
気を利かせた悠斗くんが上手いこと陸の背中を押してくれたおかげで顔を隠すことは出来た。
(ありがとう…悠斗くん)
「俺…さっきから一人にされてるけど…嫌われてしまった?」
「やぁ〜ん! 響くんそんな悲しそうな顔しないでぇ〜」
「嫌うなんてありえな〜い」
すかさず響くんが三人の気を引いてくれた。
「後は何とかしますから…」
私にしか聞こえない悠斗くんの声に小さく頷くと立ち尽くしたままの陸の背中を押しながらその場を離れた。
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