『-one-』
公認彼氏 P9
「やっだぁ! 陸くんってば麻衣先輩の事気に入っちゃったの〜?」
「そう。この後どうやって誘おうか考えているとこ」
(はっ!?)
私の涙ぐましい努力は何にも報われることはないのかもしれない。
でもこれが全部ホストの冗談だと受け取ってもらえればまだ何とかなるかもしれない、三人ともかなり酔ってるみたいだし。
危機的状況の中私は希望を捨てないことにした。
「無理無理〜」
「そうそう! 麻衣先輩には年上のすってきな彼氏がいるんだから〜」
(はい――――――っ!?)
彼女達は破壊力のある爆弾を投下をした。
それがすぐさま彼女達三人以外にかなりの衝撃を与えたことは言うまでも無い。
(な、な、な、な…なんでそうなるのっ!?)
「な、なんでっ!?」
いつからそういう事になってるの?と私は驚きを隠せなかったがそれよりも心配なのは手を取ったまま隣に立っている陸だった。
「ホストクラブも許しちゃうって事はぜーーーったい包容力のある年上の男ですっ!」
「それにー麻衣先輩って時々高そうなアクセ付けてますよねぇ? あれって彼氏さんからのプレゼントでしょー?」
(うっ…するどい)
確かに陸の買ってくるものはブランド物も多くてきっと金額もそれなりだとは思う。
まさか彼女達がそこまで目ざといとは思いもよらなかった。
そして三人の酔っ払い具合を甘く見ていた。
「麻衣先輩可愛いし、僕が貴方をお守りしますって言っちゃうような紳士!」
「超高級車に乗っててぇデートっていったらドライブの後、予約なしじゃ入れないレストランで食事!」
「三十代中頃の青年実業家! って感じじゃないですか?」
三人の視線が一斉に私に向けられた。
その勢いに呑まれて思わず怯んでしまったが何とか立て直した。
「ち、違うからっ!」
彼女達の想像は当たらずとも遠からずだが一番最後のは全然違う。
「じゃあどんな人なんですか?」
「折角だから教えて下さいよぉ」
―この人が彼氏です。
そう言って陸に握られたこの左手を挙げられたらどんなにいいだろう。
けれどそんな事出来るわけがない。
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