『-one-』

公認彼氏 P8


「どうして…? 迷惑だったかな」

 切なげな声が聞こえて来た。

(そういうのは反則…)

 陸は私の弱いところを知っていてワザとそういう事を言っている。

 だが陸は畳み掛けるように言葉を続けた。

「出来れば横顔じゃなくて俺の姿が映った麻衣さんの瞳を見たい」

 体が熱い。

 自分では分からないけれどきっと耳まで真っ赤だと思った。

 ホストの陸を甘く見すぎていた。

「麻衣さん…俺に顔見せて?」

 たまらずギュッと目を閉じた。

 陸の右手は肩を離れると私の髪を耳にかけてその指がゆっくりと耳の後ろをなぞる。

 ゆっくりした仕草は余計にそこに意識が集中してしまう。

 指はうなじを通りそのままゆっくりと下へ下りていく。

(ちょっと…やりすぎだよっ)

 ―ガタンッ!

 さすがにこれ以上は我慢出来ずに思わず立ち上がった。

 その行動は間違いだったとすぐに後悔することになったがすでに遅かった。

「先輩…?」

 突然の行動に驚いた三人はポカンと口を開けて私を見上げている。

 悠斗くんは響くんは一体どうしたの??と心配そうな苦笑いを浮かべている。

(し、しまったぁ…)

 私は今さらながら慌てて笑顔を作った。

「え、えっと…化粧室?」

 思いついた苦し紛れの言い訳を口にした。

 皆は信じてくれたらしくなぁんだといった表情で納得してくれた。

「じゃあ俺が案内するよ」

 立ち上がった陸が恭しく私の手を取った。

「一人で行けますから…」

「遠慮しないで? 俺一人残っても麻衣さんが居ないんじゃつまらないよ」

(だーかーらーみんなが見てるのに)

 まだ全員の視線は私に注目したままだった。

 この歯の浮くようなセリフをここにいる全員がはっきりと聞いてしまった。

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