『-one-』

ホストとOL P3


「今日は飲むって行ってなかった?」

 地下街で食事だけを済ませ地上に上がるとどこかへ向かって歩き出す美咲に声を掛ける。

 美咲はやけにご機嫌で鼻歌でも飛び出しそうな勢い。

「地酒が置いてある居酒屋がこの辺にオープンしたって雑誌でみたよ。そこ行かない?」

「いいから、ついてらっしゃいって!」

(もう…一体どこへ連れて行くつもり?)

 それでも今日は美咲の奢りと聞いているのでスポンサーの意見には逆らえない。

 麻衣は大人しくついて行く。

 街の中心から少し外れて小さな飲み屋が立ち並ぶ地区を通り過ぎて少しネオンも減った細い路地。

 三階建てのビルの前で立ち止まった。

 『CLUB ONE』と書かれた小さな看板がライトで照らされている。

「クラブ…オネ?」

「ま、麻衣さん?」

 美咲がポカンと口を開けて麻衣を見る。

 その顔に麻衣の顔が少し引き攣った。

「な、何よ…」

「クラブ…ワンでしょ。ワン!」

「な、何言ってんの〜!ちょっとボケたんでしょ?」

 アハハと笑って誤魔化す。

 けれど美咲は冷たい視線は容赦なく麻衣に突き刺さった。

(素で間違えた…。恥ずかしい…)

 麻衣はめげそうになるのを頭をブンブンと振って気を取り直す。
 
「バーなの?」

 銀色のドアをジロジロ眺めながら美咲に聞く。

「ううん、ホストクラブ」

 美咲が満面の笑みを浮かべた。

(ホスト……クラブ?)

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