『-one-』

ホストとOL P2


 数人のナンパとキャッチを無視していい加減ウンザリしながら何回目か分からなくなった時間確認をしようと携帯に手を伸ばした。

「麻衣、お待たせー!」

 華やかな声と共にようやく待ち人が現れた。

 手に持った携帯で時間を確認すると約束の時間から30分以上も過いた。

「相変わらずの重役出勤ですね」

「私、重役ですから」

 嫌味のつもりで言った言葉も彼女には意味はない。

 キレイにセットされた髪をなびかせてスーツに身を包む。

 加納美咲、小さいけれど業績あるIT系会社の社長。

 同じ高校を卒業したはずなのにいつの間にか差がついた。

 見た目でもはっきりと違いの出る二人。

 赤い口紅とキレイ系パンツスーツに10センチヒールと細いタバコが似合う美咲。

 一方麻衣はパステル系のワンピースがまだ着れる童顔に加えて化粧が苦手で化粧ポーチにはピンクの口紅と鏡とあぶら取り紙のみ。

 そんな麻衣に「麻衣には麻衣の魅力があるんだから」と美咲はもう何年も言い続けていた。

 ようやくその魅力(?)に気付いたのは最近。

 何年か前までは大嫌いだった童顔も年と共に若く見られるなら悪くない。

 あんなに苦手だった美咲の隣に立つ事も今ではワンピースに素足サンダルで並んでも気にならない。

「麻衣ー!今日のワンピめちゃめちゃ可愛い〜」

「ほんと?すっごい一目惚れだったの!」

「悔しいー!私には絶対そういうの似合わないもんなぁ!」

 美咲が悔しそうに上から下まで眺める。

 麻衣はヘヘッと笑いながらクルッと回って見せた。

「そんなに可愛いなら今日はバッチシ!」

「バッチシ?」

「さぁ!行こう。とりあえず軽く何か食べてからにしよう!」

 やけに張り切っている美咲が歩き始めた。

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