『-one-』

公認彼氏 P5


「やっと来たぁ!」

「あんまり遅いから逃げちゃったかと思いましたよぉ!」

 嬉しいんだか悲しいんだか熱烈大歓迎だった。

 心細い私を一人残して誠さんは嫌味なくらい涼しい笑顔で軽く会釈すると挨拶をして廻りながら奥へと消えていった。

「遅くなって…ごめんね」

 テーブルには案の定いつものメンバーが座っている。

(胃が痛くなりそう…)

 でも彼らも一応プロなんだし気を付けてくれるはず、特に響くんは頭の回転も速いし何かあってもすぐに対処してくれる。

 大丈夫――私は自分自身に言い聞かせた。

「麻衣先輩はココに座って下さいね!」

 指差された場所を見てギョッとした。

 だがすぐに気が付いて顔に笑顔を貼り付けた。

(わ、笑えてるよね?)

 顔が引き攣るのも仕方が無い。

 指差された場所はボックス席の向かって右側、勧めてくれた子の隣でもちろんその隣にはホストが座っている。

「どうぞ」

 すぐに立ち上がったホストが私を中へとエスコートしようとする。

「えっと…私は別に端でもいいんだけどぉ…」

「大切なお客様にそんな所に座らせるわけにいかないですよ」

「そうですよ! 今日は麻衣先輩の為にナンバーワンの隣譲っちゃいますね!」

(譲ってくれなくてもいいんだってば!!)

 叫べるものならそう叫びたかった。

 もちろんそのナンバーワンの胸中は私を隣に座らせたくて仕方が無いはず。

 極上の笑顔を見せて席に座るように促している。

 久しぶりのホスト姿の陸は…やっぱりカッコいい。

 今日着ているドルチェ&ガッバーナの1つボタンのシングルスーツは春に購入したものだった。

 細めのラバーラインがポケットやパンツのサイドにあしらわれたお洒落なデザイン、それに最近買ったばかりの同じドルチェ&ガッバーナのベストを着ている。

 前から見れば普通の黒いベストだが後身頃は「DG」のモノグラムが織り込まれた光沢のある生地。

 ウエスト部分にはベルトストラップが付いている。

 陸も私も一目で気に入った。

「ほらぁ! 見惚れてないで早く座って下さいよっ」

 その声に自分が陸に見惚れていた事に気が付いて慌ててソファに腰を下ろした。

[*前] | [次#]


コメントを書く * しおりを挟む

[戻る]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -