『-one-』

公認彼氏 P2


「彼氏さんに怒られますか?」

「エッ!? か、彼氏って…ど、どうして??」

 まさかの一言に動揺しすぎてしまった。

 その過剰までの反応のせいで三人は不思議な視線を私に向けた。

「ホストクラブだしー彼氏さんが怒ったりしたら悪いですしー」

「ねー」

 三人は互いに顔を見合わせて頷いた後に私に視線を戻した。

 どうやら私の返事を待っているらしい。

「あー…まぁ…それは大丈夫…かな?」

 むしろ大喜びで諸手を上げて歓迎するに決まっている。

 特に最近は店の子達がマンションに遊びに来てくれるので店に顔を出す機会も減っているからなおさら。

 だからといって会社の子と一緒というのはさすがにマズイわけで…。

「じゃあいいですよね! 私達が奢っちゃうんで入りましょっ」

「え、えっ…ちょっと…」

 若いって本当にパワーが溢れているんだと実感した。

 躊躇なく私の手を掴むと引きずるように引っ張りながら店に入ろうとしている。

(どうしよ…どうしよ…)

 何とかしようと腰の引けた情けない格好で店の前で踏ん張りながら口を開いた。

「で、電話したいから先入ってて! ねっ?」

 叫ぶような私の声で開かれそうになっていたドアはかろうじてまだ閉じたままだった。

 三人に気付かれないようにホッと息を吐いた。

「逃げたりしませんよね?」

 疑いの目を向けられて思わず胸を張った。

「逃げるわけないじゃない! せっかく奢ってもらうんだから」

 力強く言い切ると三人は安心したのか笑顔になった。

(本心はすっごい逃げたいんだけどね…)

「じゃあ電話終わったら来て下さいね?」

 私の心の読んだのか期待を込めた目で私を見ると何度も念を押しながら店の中へと入って行った。

 ドアが開いた瞬間に聞こえた店内のざわめきが少し懐かしい。

 少しセンチメンタルな気分になりながら再びドアが閉じると力なく座り込んだ。

「どーしよ…」

 膝を抱えながら少し泣きたくなっていた。

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