『-one-』

アツアツサマー P14


「本当に良かったのかな?」

 助手席に座っている麻衣が呟いた。

「きっと最初からそのつもりだったんだよ」

 あー見えて優しいところあるからと陸が付け加えた。

 二人は帰り道の車中だった。

 バーベキュー道具を片付けると一行は近くにあるという日帰り温泉に立ち寄った。

 のんびりと温泉を楽しんだ後、行きと同じように車に乗り込もうとする悠斗と響に誠が声を掛けた。

 そして二人は無理矢理ハイエースに乗せられた。

「俺に足向けて寝るんじゃねぇぞ」

 誠は唖然とする陸にそう言うとすぐに車に乗り込み陸と麻衣を残して走り去ってしまった。

 残されてしまった二人は誠に感謝しながら車に乗り込むとせっかくだからと足を伸ばして土岐にあるアウトレットへと寄った。

 陸はTシャツを三着買い麻衣の服も選んだ。

 二人でキッチン雑貨などを見て回り夕食にオムライスを食べたりしながら久しぶりの遠出を楽しんでいた。

 そして今は昼間の暑さもすかり消え空には星が瞬き二人が乗る車はようやく名古屋市に入ったところだった。

「少し寄り道しよっか?」

 最寄りのインターが近付いて提案した陸に麻衣はすぐに頷いた。

 休みの間特にどこにも出掛けなかった二人は束の間の夜のドライブを楽しむ事にした。

 南へと車を走らせた陸は早めに高速を下りると海岸沿いの道へと進路を取った。

 二人の思い出の場所で車を止めたが暗く危ないからと海岸へ下りるのを止め車の中から海を眺めた。

 昼間は海水浴客で賑わっていた海も今はすっかり静かで車もまばらにしか通らない。

 二人がコンソールボックスを挟んで寄り添っていると運転席に座る陸が大きな欠伸をした。

「眠い?もう帰ろ?」

「んー…少し後ろで休んでもいい?」

 麻衣は帰ることを促したが陸は後部座席を指差した。

 確かに眠い時は無理して運転するよりも仮眠を取った方がいいと聞いた事があった麻衣は頷いた。。

 麻衣は陸と二人でシートを倒して簡易ベッドを作った。

 辺りはもう真っ暗だったが陸は昼間と同じようにカーテンも閉めた。

「ずっと運転してもらちゃったから…ごめんね?ゆっくり休んでね」

 そう言うと麻衣は助手席に戻ろうとした。

 けれど陸の手は麻衣を掴まえて引き止めた。

「麻衣も一緒に…ね?」

 陸は甘えた声で自分の隣を叩いた。

 少し迷っていた麻衣だったが陸の視線に負けてしまった。

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