『-one-』

アツアツサマー P12


 肩を抱き直されて二人の距離はより近づいた。

 陸はいつでもどうぞとばかりに口元に笑みを浮かべて麻衣を待った。

「意地悪…」

「どっちが意地悪?俺の前で他の男の腕に抱かれるのを見せ付けたのは誰?」

「あれは…っ」

 突然の事故のようなもので回避出来なかった。

 むしろ回避していたら今頃麻衣は全身ずぶ濡れになっていたことは陸も承知している。

「それでも嫌なものは嫌だ。お酒飲んでる麻衣は…」

「それは言わないで!」

 失態の数々を思い出されたくなくて麻衣は手で陸の口を押さえて言葉を遮った。

 これ以上間が空くとまた話が思わぬ方へと進んでしまいかねないと思った麻衣は陸のTシャツを掴んだ。

 少し首を伸ばすように顔を傾けると唇を重ねた。

 軽く触れると一度離れ互いに視線を絡ませ合うとそっと目を閉じた。

 ゆっくりと唇を重ね啄ばむようなキスを繰り返す。

 どちらからともなく唇を開くと陸は麻衣の下唇を甘噛みしながら麻衣の手を撫でた。

 Tシャツを掴む腕を擦りながら自分の首に回すように引っ張り上げた。

「んっ…」

 麻衣が陸の首に腕を回すと二人はさっきよりも深く求めた。

 開かれた唇の間から舌を滑りこませると待ちわびていた麻衣の舌を突付きまるでダンスでもするように二人の舌が絡まり離れる。

 涼しくなった車内に聞こえるのは荒くなった二人の息遣い。

「んぅっ…だ、だめっ…」

 陸の手がTシャツの下に滑り込むと麻衣の脇腹を撫でる。

 くすぐったそうに体を捩る麻衣は唇を離すと陸にメッと牽制した。

「ほんとに?」

 柔らかい声で囁きながらTシャツの下の手は麻衣の柔らかい肌の上を滑るように動き回り背中を撫でる。

 背中を指先で撫でられると麻衣は熱い吐息を漏らした。

 麻衣の感じるところを熟知している陸は唇に優しいキスを落としながら指を動かした。

「もう…だめって言ってるのに」

 口では嫌がっていても麻衣の手はしっかりと陸の顔を引き寄せたままで説得力はない。

「どれがダメ?」

「手…背中の…」

「じゃあこれはいい?」

 プチンと背中で外された感覚に麻衣は体を強張らせた。

 胸元が緩くなり今まで体を締め付けていた物はその役目を果たさなくなっていた。

 陸の手はゆっくりと背中から脇を通り特に柔らかい肌に触れる。

「陸…っ、こんな所じゃダメだってば…」

「大丈夫、カーテン閉めたでしょ」

「だけど…」

 さすがにここまで来ると麻衣は陸の胸に手を付いて少し押し返した。

 けれど陸は右手でしっかりと麻衣を抱き寄せて左手は優しい仕草で柔肌をなぞっている。

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