『-one-』

アツアツサマー P11


「おーろーしーてっ!」

 大声を出す麻衣が地面に足が着いたのは少し離れた空き地に止めた車の横だった。

 手早く鍵を開けた陸は麻衣を後部座席に引っ張り込む。

 炎天下に置かれていた車内はまるでサウナのように蒸していて入った途端息苦しさを感じるほどだった。

 陸はすぐにエンジンを掛けると一気に風が噴出し車内の熱気を外に出すために窓を全開にした。

 麻衣は額に浮かんだ汗を首に掛けていたタオルで拭った。

「陸…?」

 後部座席から身を乗り出しながら冷房を操作している陸に声を掛けたが返事を返さない。

 心なしか背中が怒っているように見えた。

 麻衣は不安になって陸のTシャツを後ろから引っ張った。

「ねぇ…陸?」

 チラッと振り返った陸の表情は表現しにくい複雑な顔をしている。

 エッ?と少し驚いた麻衣を見ていた陸は窓を閉めると麻衣の横に座り直した。

「ん!」

 陸は足を大きく開きシートをバンバン叩いた。

 ココに座れと言ってるのは分かったが麻衣は躊躇した。

「暑いし…」

「すぐに涼しくなる」

 拒否するのは許されないと分かると麻衣は大人しく陸の足の間に座った。

 満足そうに頷いた陸は麻衣の足を抱えサンダルを脱がせるとシートの上に乗せた。

 シートの上で麻衣は横抱きにされ二人の顔は近くなった。

 麻衣は不安そうな顔で陸を覗き込んだ。

「怒ってるの?」

「そう思うなら機嫌直して?」

「どうすれば直るの?」

「分かってるくせに」

 会話は怒ってるという前提で始めたがどうやら当たっていたらしい。

 見上げる麻衣は逆にジッと顔を覗きこまれて視線を泳がせた。

 陸の機嫌が直る方法は誰よりも麻衣が知っている。

 けれど…外は明るくここは同じように川遊びに来ている車が他にも止まっている。

 麻衣は無言でフロントガラスの方に視線をやると遊びに来ていた家族連れが車の前を横切った。

 チラッと陸に視線を送った。

 麻衣の心中を察した陸は手を伸ばすと運転席と後部座席の間のカーテンを引いた。

 外からの光が遮られ少し薄暗くなると陸は麻衣の肩を抱き直した。


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