『-one-』

アツアツサマー P10


「遠足の引率にでもなった気分だな」

「ガキのお守りは大変っすね」

「お前が言うか?お前が」

 組み立てられた大きなサンシェードの下でのんびりと言葉を交わすのはアルコールの入っていない誠と陸。

 彼らの視線の先には服を濡らしながら川遊びをするホスト達の姿。

 すでに下着一枚ではしゃいでいるものもいた。

「ほんとにあれはどうかと思うけど…」

 誠の隣座った美咲は呆れながら見つめる視線の先には膝上までズボンを捲り上げた麻衣の姿。

 ホスト達に交じって水しぶきを上げている。

「お前、いいの?」

「麻衣が楽しそうにしてるのを邪魔したくないんで」

「何…その大人な発言」

 余裕な感じに聞こえる陸の発言に誠と美咲は目を見張った。

 その陸は優しい眼差しで水の中で遊ぶ麻衣を見つめている。

「けど…あの子お酒飲んでたよね?」

 美咲が思い出したように口を開いた。

「それほど飲んでないから大丈夫…たぶん」

 その言葉は自分自身に言い聞かせるようにも聞こえた。

 三人の心配をよそに穏やかな時間が流れていく。

 ほとんどが上半身裸になり水の中を駆け回っていた。

「あぁ…そうだ。今日休みにしたから」

「マジで!?やった!」

 三人で真面目に仕事の話をしていると誠が思い出したように陸に声を掛けた。

 もちろん陸が飛び上がるほど喜んだのは言うまでもない。

 誠はNo.1がこれだよと派手な溜め息をついてうな垂れた。

「来週からサボんじゃねぇぞ」

「まかしとけって!」

「お前は調子良すぎなんだよ!」

 誠に頭を小突かれながら陸は嬉しそうに麻衣に手を振った。

 気付いた麻衣も手を上げて大きく手を振り返した。

「アッ!」

 三人の短い悲鳴が同時に上がった。

 視線の先には手を振った麻衣がバランスを崩して大きく上体を揺らしている。

 陸は急いで腰を浮かした。

「あ…」

 だが陸が駈けつけるよりも早く側にいた響が倒れる麻衣の体を抱き留める。

 二人はホッと息をついた。

 だが陸は弾かれたように立ち上がると地面の石を蹴り砂埃を立てて走り出した。

 誠と美咲が呆気に取られているうちに陸は麻衣の元へ駆け寄り響の腕の中に抱きしめられている麻衣を抱き上げると近くにあったサンダルを拾い上げて歩いて戻って来た。

「ちょっと!陸ぅ!」

 横抱きにされた麻衣は暴れているが陸は聞く耳を持たない。

 そして声を掛けようとする誠と美咲に見向きもせず二人の横を通り過ぎていった。

「全然大人じゃねぇじゃん」

 誠は苦笑交じりに呟いた。

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