『-one-』

アツアツサマー P9


 着いたのは山に囲まれた板取川の川岸。

 初めてばかりの素人の寄せ集めにしては手際よく準備を済ませる事が出来た。

 肉の焼ける香ばしい匂いが辺りに漂い始めていよいよお待ちかねのバーベキューが始まった。

 そして肉に飢えた猛獣と化したホスト達を統率するのは誠でも麻衣でもなく美咲だった。

 鉄板の上に所狭しと乗せられた肉の上にさらに肉を乗せようとした悠斗の手を叩いた美咲。

「こらっ!そんなに乗せたら焼けないでしょ!」

「肉は何回もひっくり返さないっ!」

 鍋奉行ならぬバーベキュー奉行になっていた。

「なんかいつもと違う…」

 麻衣から肉の乗った皿を受け取りながらキビキビと仕切る美咲を驚いた表情で見ていた。

 隣に腰を下ろした麻衣はクスクス笑った。

「美咲はもともと体育会系なの」

 高校時代ハンドボール部でキャプテンをしていた美咲の姿を思い出していた。

 真っ黒に日焼けをしてチームを引っ張っていた男勝りな姿は今の美咲からは想像出来ない。

「男勝りは…変わってないか」

「ん?なに?」

「何でもないよ!」

「ちぇっ…今日は何でもないばっかりだ。それより……これカニじゃん?」

 箸で摘み上げた赤ウインナーは少し焦げたカニの形をしている。

 不服そうな顔の陸に思わず吹き出した。

 麻衣に笑われてますます面白くなさそうに口を尖らしながら飲み物に手を伸ばした。

「それに…ウーロン茶って」

「コーラもあるよ?」

「そうじゃなくって!」

 皆が次から次へとビールを空けていく中陸が飲めるのはウーロン茶とジュースだけ。

 手に持っているウーロン茶のペットボトルにため息をついた。

「だから帰りは私が運転するよって言ったのに」

「それは絶対いい。…って麻衣ってばもう飲んでんじゃん!」

 麻衣にハンドルを握らせるわけにはいかないと即答する。

 だが麻衣の手には缶チューハイが握られていてたった今その中身を飲み干した所だった。

「だってぇ…」

「いいよ。ほら!」

 陸はクーラーボックスから二本目の缶チューハイを取り出して麻衣に渡した。

「ほんとに?」

 冷たく冷えた缶を両手で持つと陸の顔色を窺うように覗き込んだ。

 陸はその顔を見てニッと笑った。

「キスしてくれたらね?」

 陸は唇を突き出すと目を閉じて顔を近づけた。

「じゃあタコさんとね?」

 麻衣は自分のさらにあったタコの形をした赤ウインナーを陸の唇に押し付けた。

 その感触に陸は薄く目を開けて確認すると嬉しそうに大きな口を開いた。

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