『-one-』

猛アタック P11


 握られた手がグイッと引っ張られて体が陸の方へと倒れこんだ。

 陸の腕が腰に回されて体が密着する。

「麻衣?俺を見て」

 涙が溢れて顔が上げられない。

 麻衣は陸の体を押し返そうと二人の間に腕を滑り込ませる。

「麻衣!ちゃんと見て?」

 さっきよりも強い口調に麻衣は顔を上げた。

 陸の瞳が少し潤んでいるように見えた。

「麻衣、この前言った事もう一度言える?」

 え?と首を傾げて陸を見る。

「俺が嫌いだから二度と会いたくないって」

「………」

「嫌いなんだろ?早く言えよ」

「……陸が嫌…い…だか…ック…」

「言えないの?」

 涙が止まらなくて続きが言えなかった。

 言えない理由はもちろんそれだけじゃない事も分かっている。

「そんなに難しい?」

「麻衣?好きって認めるのがそんなに難しい?」

「俺の事、好きなんだろ?」

「麻衣、顔上げて」

 答えられない麻衣に陸は畳み掛けるように言葉を投げ掛ける。

 麻衣は聞きたくないと思っても耳を塞ぐ事も出来なかった。

「麻衣の嘘つき。好きって言って」

「麻衣の不安は俺が全部取り除くから…麻衣の本当の気持ち教えて…」

「……き」

「聞こえないよ。」

「…陸が…好き」

「もう一回」

「陸が好き…陸が好き…」

 言葉にしてしまうとしまい込んでいた気持ちがとめどなく溢れ出た。

 8歳も年下のしかもホストに恋をした。

 これが辛い恋になるかもしれないといくら諦めようとしても気持ちはもう止める事が出来なかった。

 目の前にいるこの人の瞳を信じたいと思った。

「ありがとう。麻衣大好きだよ…」

 陸は麻衣を力いっぱい抱きしめて甘く震える声で囁いた。


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