『-one-』
SWEETNESS P22
「初めての人は麻衣から告白したの?」
「友達から紹介されて付き合い始めたのは向こうから言われてだよ」
「初めてのキスは?いつした?」
返事を待ったが黙ってしまった麻衣に陸は顔をグイッと前に突き出すと覗き込んだ。
「初めてのちゅーだよ?」
陸は唇を突き出してチュッと音を立てて麻衣にキスをする。
恥ずかしいのか照れているのか麻衣はチラチラと陸の顔を見た。
陸は麻衣の顔を覗き込んだまま返事を待った。
「付き合い始めた日…」
「へー結構手の早い男だったんだ」
「人の事言えるー?」
素直な感想を言うと麻衣が間髪入れずにつっこんだ。
顔の位置を慌てて戻そうとすると麻衣が陸の顔を捕まえた。
「自分がした事は忘れちゃったー?」
「覚えてるよ。だってあん時は麻衣があんまり意地悪な事言うからついカーッとしちゃって」
「だからって最初のキスがあれなんて…」
「あれ?でも最初って確か…」
陸は言いかけて慌てて口を噤んだ。
だが麻衣が聞き逃すはずもなくピクッと反応した。
「りーくぅ?どういう事?」
麻衣はプゥと頬を膨らませてあまり怖くない顔で睨みつけている。
(怖いというよりむしろ可愛い顔なんだよね〜)
その顔に見惚れながらも少し神妙な顔をした。
「怒んない?」
「…多分」
「怖いなぁ…。あの日さ…麻衣車の中で寝ちゃっただろ?店に着いてからも起きなくて…そしたらすっげぇ可愛い顔で寝てるもんだから思わず…チュッと」
ずっと黙ってきた事実を初めて口にした。
麻衣の反応にビクビクしながら返事を待った。
(あれ?怒ってない?)
「そうだったんだ…」
その表情はなぜかホッとしているように見えた。
「怒ってないの?」
「ちょっとびっくりしたけど…最初があんな激しいのよりはずっといいもん」
寝ている時にされたキスの方がいいとは女心は難しい。
それでも予想していたお叱りを受けずに済んで陸はホッと胸を撫で下ろした。
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