『-one-』

SWEETNESS P21


 グラスを置いてから麻衣に視線を戻すとジッとこっちを見ていた。

 陸は決まりが悪くて視線を逸らした。

 すると麻衣は陸の視線を追い掛けるように首を回して顔を覗き込んできた。

「なに?」

 少し投げやり気味に返事をした。

「んーん。陸も今の私の方が好きなのかなーって。私は今の陸の方が好きだよ?」

「なんか嫌だ。今の俺格好悪いじゃん」

「格好悪くなんかないよ?こんな陸見れるのは私だけなのかなぁ…って思ったらすごく嬉しい」

 麻衣はへへへ…と恥ずかしそうに笑った。

「特別って感じ…かな」

 恥ずかしくなったのか俯いた麻衣はワインを飲もうと手を伸ばした。

 陸は伸ばしかけた麻衣の手を掴んで体を抱き寄せると乱暴に唇を重ねた。

「んぅっ!」

 少し抵抗を見せた麻衣もすぐに大人しくなった。

 陸は昂った感情をぶつけるように麻衣の舌を何度も強く吸った。

「…っ、はっ…はぁっ」

 顔を離すと麻衣はぽわんとした表情で陸を見た。

 陸はワインのボトルを掴むと直接口を付けて中身を口に含むとキスの余韻に浸る麻衣に飲ませた。

 口の端から少し零れた分を舌で舐め取ると陸は頬を両手で挟みこみ少し強めに唇を重ねる。

「俺も今の麻衣が好き。明日はもっと好き」

 言いたかった言葉を吐き出した。

 口説き文句なんかじゃなく日増しに麻衣への想いは強くなっている。

 出会った時の事を思えばもう比べ物にならないほど陸の中で麻衣の存在は大きくなっていた。

「私も好き。明日はもっともっと好き」

 額同士をコツンとぶつけて二人は小さく笑った。

「でも…昔の男の事は聞きたい」

「言うと思った」

 麻衣は笑ったが今度は気に留める事なく腰に腕を回して抱き寄せた。

 後ろ向きに麻衣を足の間に座らせて腰を抱くと麻衣は陸の体にもたれて見上げた。

「ドキドキいってる」

 麻衣が胸に耳を当てている。

「今から麻衣の歴史を明かされるかと思ったら緊張してきた」

 陸はわざとおどけた調子で言った。

 それが当たらずとも遠からずということは本人だけじゃなく麻衣にも分かっている。

「はい、いつでもどーぞ」

 麻衣は両手を陸の手の上に重ねるとペチペチと叩いて合図を送った。


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