『-one-』

SWEETNESS P20


 その年齢にはさほど驚きはなかった。

 例の初恋の人とやらをいつまでも想っていた事は前に聞かされて知っている。

 好きな人がいるのに他の奴と付き合えるほど麻衣が器用じゃない事も…。

 だが念のためというか一応確認したくて口を開いた。

「初めて付き合った人?」

「うん」

「初めてのキスもその人?」

「…うん」

「今までに…何人くらい?」

「さ、三人…陸が四人目」

 陸の胸の中は複雑だった。

 麻衣と付き合った男が少ないのは正直嬉しいが初体験が遅かっただけになんとなく最初の男への思いは深そうな気がする。

(初めての相手ってのは忘れられるわけないしな…)

 自分の事は棚に上げて陸は麻衣の過去の男に嫉妬した。

「初めての人ってどんな人だった?麻衣から告白したの?」

「…そんな事も聞くの?」

「言いたくないならいいよ。ごめん」

 こんなくだらない事で麻衣とケンカするつもりはない。

 気にはなるが嫌がるようならこれ以上は無理に聞き出すつもりはなかった。

「そうじゃないけど…陸は嫌じゃないの?そういうの聞くの…」

「んー確かに…ちょっとヤキモチ妬いてるけど麻衣の事は何でも知りたい。どんな男のそばにいてどんな恋愛してきたとか…どんなエッチしてきたとか…」

(俺って心の狭いというか器の小さい男なのかもな…)

 自分自身が情けなくなりながらも陸は言葉を続けた。

「麻衣の昔の男に負けたくない。バカみたいだけど…昨日の俺より今日の俺の事をもっと好きになって欲しいって思ってる」

 少々痛い発言だという事は自覚している。

 それでもそれが本心なのは偽りようのない事実だった。

「昨日の陸にもヤキモチ妬くの?」

「そうだよ?今の俺よりも昨日の俺がいいって麻衣が言ったらね?」

 麻衣は声を出してクスクス笑った。

 バカにされたのかと陸は少しムッとして口を尖らせるとグラスに半分ほどワインを注いで一気に飲み干した。
 

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