『-one-』

SWEETNESS P18


 陸は手を伸ばすとフォークでチョコケーキを一口掬った。

「食べる?」

 麻衣の顔の前に差し出すと麻衣はグラスを口から離して嬉しそうに頷いた。

 フォークを口元まで運ぶと麻衣はパクッと食いついた。

 麻衣が唇でフォークを挟むと陸はゆっくりと抜き取って皿の上に戻した。

 麻衣は食べ終えるとまた一口ワインを飲んだ。

「美味しい?」

「うん!」

 笑って頷く麻衣からグラスを受け取ると残っている分を一気に流し込んでテーブルに置いた。

「さてと…」

 陸は一度座りなおすと少し背筋を伸ばした。

 足を大きく広げて両膝を立てると膝の上に腕を置いて頭をコテンと乗せると麻衣の顔を見た。

 麻衣は横座りになって視線の高さが同じになった陸の顔をキョトンとしながら眺めた。

「どうしたの?」

「ん?聞きたい事あるって言っただろ?」

「んーー。あっ…そう言えばタクシー乗る時に言ってたね?」

 んーと首を傾げる姿が子供っぽい。

 そのくせシャツ一枚の姿は色っぽくそのギャップが何とも堪らず男心をくすぐった。

「なぁに?」

「ちゃんと答えてくれる?」

「変なこと聞くの?」

 不安になったのか眉が少しハの字になった。

 安心させるように麻衣の手を取ると握りながら親指をさするように動かした。

「んー変なことじゃないけど…心配?」

「ちょっとだけ?」

 親指と人差し指で作ったジェスチャーを顔の前に出して少し微笑んだ。

(まー大丈夫だよな)

 麻衣の表情を見ながら陸はようやく本題に入る決意をした。

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