『-one-』
SWEETNESS P13
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酔っ払ってトロンとした瞳にうっすらと涙を滲ませて麻衣が顔を上げた。
「麻衣のように可愛らしいバラを見つけたんだ」
そう言いながら差し出したのは淡いオレンジとピンクが混ざり合った丸くコロンとした形が愛らしいバラが10本。
薄いグリーンの不織布に包まれて幅広のシャンパンゴールドのリボンで留められている。
「…これ、私に?」
「麻衣以外に誰にあげるの?」
麻衣は驚き過ぎているのか棒立ちになっている。
陸は麻衣の手を取るとそっと花束を持たせた。
香りを嗅ぐように花にそっと顔を近付けている。
「こんなバラがあるの?」
「ベビーロマンチカって言うんだよ。可愛いだろ?」
「名前も可愛いんだね」
「最近は人気のあるバラらしいよ」
嬉しそうに花から目を離さない麻衣の髪を指でかき上げると頬にキスをして上を向かせた。
陸はキスしたい気持ちをグッと堪えて麻衣の頬を撫でる。
「機嫌は直った?」
「別に怒ってたわけじゃ…ないもん」
「ハハ…分かったよ。じゃあ帰ろうか?」
また機嫌を損ねてしまわないようにと陸は話を切り上げて店を出る。
二人でタクシーを拾うために歩いていると麻衣は陸の持っている袋に目を留めた。
「何が入ってるの?」
袋を指差している。
「あぁ…これね」
陸は袋の中身を麻衣に見せた。
袋の中にはケーキの箱とカフェ・ド・パリが一本入っていた。
「店に来る途中に買って来たんだ。帰ったら麻衣と食べようと思って」
「準備がいいね?お酒も?」
あまりの手際の良さに麻衣が呆れ顔で見上げている。
陸は視線を泳がせて愛想笑いをした。
「酒は飲むつもりなかったんだけど…まぁ…今日は麻衣に聞きたい事も出来たしお酒飲みながらゆっくりするのもいいかなぁ…」
「聞きたい事って?」
「ん?帰るまで内緒だよ。ほら、タクシー来たよ」
首を傾げる麻衣を急かせながら二人はタクシーに乗り込んだ。
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