『-one-』
SWEETNESS P12
「麻衣、ちょっと待って」
ドアを開けて出て行こうとする麻衣を呼び止める。
まだ膨れっ面の麻衣は大人しく立ち止まって振り返った。
「これ、忘れてるでしょ?」
「どーせ私は葉っぱだもん」
さっきのモンステラを見て口を尖らせる。
陸は困ったように笑いながら麻衣を手招きした。
口を尖らせたまま少しの間動かなかったが陸がもう一度手招きをすると歩いてきた。
「前に観葉植物が欲しいって言ったのは麻衣だぞ?」
陸は腰を屈めて麻衣の膨れっ面を覗き込みながら鼻を突付いた。
麻衣はキョトンとする。
「すっごい前の話だよ?」
それはまだ二人が一緒に暮らし始めて間もない頃、殺風景な部屋に麻衣がそう言った事があった。
「うん、まー色々あったし遅くなったけど」
食事をしながらの何気ない会話を陸はずっと覚えていた。
本当は麻衣と一緒に選びたいと思っていたけれどなかなか時間も取れずに今日まで来てしまっていた。
店に電話して美咲と塔子の来店を聞いた陸は二人に花を贈る事にかこつけて麻衣へ贈る観葉植物を真剣に選んでいたのだ。
「麻衣…?」
黙り込んでしまった麻衣が心配になって肩に手を置こうとすると麻衣はポフッと顔を陸の胸に埋めた。
「ど、どうしたの?」
「ごめんね。覚えてくれてるなんて思わなかったから…」
小さな声で謝る麻衣を陸は抱きしめた。
腕の中にすっぽりと納まる小さな肩を抱きしめながらポンポンと背中を叩く。
「俺はどんな時でも麻衣の事考えてるんだよ?」
麻衣はこくんと頷いた。
(ほんと…可愛いんだから)
年上とは思えない可愛い麻衣をぎゅっとするとチュッと音を立てて麻衣の頭にキスをした。
ゆっくりと体を離すと麻衣の頭に手をポンと置いた。
「顔上げて?」
いつもよりも数倍優しい声で麻衣に呼びかける。
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