『-one-』

SWEETNESS P11


「お前らほどほどにしとけよー」

 酔っても冷静な誠が痺れを切らして口を挟んだ。

 ハッ!と気付いた陸が慌てて膝の上の麻衣の顔を覗き込んだ。

 麻衣は下唇を噛んでいる。

「麻衣?」

「別に気にしてないもん!」

 陸が聞きたかった事を麻衣自身が先に口にした。

 でもその膨れっ面から気にしている事は誰が見ても明白だった。

(あっちゃー…最悪)

 陸は額に手を当ててがっくりと肩を落とす。

「バーカ」

 誠は呆れた顔で陸に向かって言った。

 陸は顔を上げると誠…ではなく悠斗の顔を睨みつけた。

「な、何すか!俺のせいじゃないっすよ!答えたのは陸さんっすよ!」

「後で覚えとけよ…」

 悠斗の弁明は聞き入れられる事はなかった。

 陸は困り果てていた。

 いつもの麻衣なら少し話せばすぐに機嫌を直してくれるはずだ。

 けれど今の麻衣は酔っ払っている。

「麻衣?麻ー衣ちゃん?」

「なぁに?」

「もう昔の話だからね?あの頃は俺もガキだったし興味本位ーみたいなとこあったからさ」

「別に気にしてないもん」

(ってめちゃめちゃ気にしてんじゃん!でもそこも可愛いんだけど)

 麻衣はすっかりヘソを曲げてしまっていた。

 けれどヤキモチを妬いている麻衣が可愛くて陸は思わずヘラッと笑った。

「あーぁ、情けねぇなぁ…」

 誠はおたおたしている陸を鼻で笑いながら美咲の手から割り箸を抜き取った。

 誠はチラッと響に視線を送ると目で合図をした。

 気付いた響は小さく頷いて見せる。

「次は俺が王様な」

「あーーっ!そんなの反則っすよーーー!」

 悠斗が異議あり!とばかりに大声を出したが誠に睨まれると一瞬で大人しくなった。

「じゃあ2番と……5番は今すぐ退場って事で」

 響はいつの間にか麻衣の手から抜き取った割り箸を見せ、誠が命令をする。

「退場って!?」

 またも悠斗が大声を出すが誠に一睨みされてすぐにシュンと体を小さくさせた。

(誠さん…助かったぁ)

 陸はホッとしながら麻衣の肩をポンポンと叩く。

「俺と麻衣は退場だって?どーする?」

「誠さんひどいっ!もう帰るっ!!」

 酔っているせいなのか簡単にのせられてしまった麻衣はプゥと頬を膨らませて立ち上がった。

 そしてそれに続くように陸も立ち上がる。

「この貸しはでけーぞ」

「すんません」

 先に歩いていく麻衣の後ろ姿を見守りながら陸は誠に頭を下げた。


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