『-one-』

SWEETNESS P7


 差し出されたのは観葉植物。

(花…じゃない)

 一番驚いたのは麻衣だった。

 けれど陸は気にする様子もなく白い陶器の鉢に植えられた観葉植物を麻衣に手渡した。

「葉の形がハートの形をしていて可愛いだろ?」

「う、うん…可愛いね」

 確かに可愛いとは思うがやはり花じゃないということにはがっかりさせられた。

 二人のように綺麗で華やかさのある花じゃなくてももっと色々な花があると思うのに…。

「麻衣さんにはどうしてそれを?」

 塔子が聞きにくい質問をした。

 皆も聞いてみたいと言わんばかりの目で陸を見た。

「これを見るたびに俺のことを思い出してくれるように…」

 陸の言葉はもっともらしく聞こえるけれどいつもの陸とは何か違うとホスト達は違和感を感じた。

 麻衣もまた同じように違和感を感じた。

「いんじゃない?インテリアには人気の観葉植物でしょ?確か…モンステラって名前だったじゃない?」

「その通り。ハワイとかでもよくモチーフにされたり、インテリアとして結婚祝いや新築祝いなんかで贈られるんです」

 美咲の言葉に陸が付け加えると一同がへぇ〜と感心した。

 さすがに花の知識には詳しいだけの事はある。

「それに…これにも花言葉があるんですよ?」

「観葉植物にもあるの?」

 花にしかないと思っていた麻衣は驚いて聞き返すと陸は笑って頷いた。

(こんな葉っぱだけなのに…?)

「それの花言葉は何て言うの?」

 興味を示した塔子が尋ねた。

「いくつかありますよ。嬉しい便り、壮大な計画、それと…」

 陸は言葉を切ると麻衣の方へ向き笑顔を見せた。

 麻衣はその笑顔にドキッとしながら次の言葉を待った。

「深い関係」

 一同思わず黙り込んでしまった。

(塔子さんもいるのに…)

 二人の関係を暴露したとも取れる陸の発言に麻衣は顔を強張らせた。

 気になって塔子の表情を窺ったが特に変わる様子もなく笑っている。

「あーもぅ!ハイハイ…やってられないわ。さっさと王様ゲームの続きをやろう!悠斗くん準備!準備」

 その場の空気を変えるように美咲がパンパンと手を叩いた。

 悠斗は慌てて割り箸を集め始めた。

「花はこちらでお預かりしますね」

 スタッフが二人の花束と麻衣の鉢植えを受け取って奥へと持っていく。

 陸はソファの背に腕を回して麻衣の耳元に顔を寄せた。

「嬉しくない顔してる」

 少し不機嫌そうな声で囁いた。

 体を寄せられて麻衣は困った顔で少し体を横へとずらした。

 ムッとした陸は麻衣の後ろ髪を指で摘んで引っ張った。

「そんな可愛くないことしてると意地悪するよ?」

「こういうことしたらダメだって…」

 陸の体を押し返しながら小さな声で呟いた。

(二人の関係がバレたら一体どうするの?)

 麻衣はこれ以上二人の関係がバレないようにすることに必死だった。


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