『-one-』

SWEETNESS P6


 スタッフが奥から持ってきたのは花束だった。

「久し振りにお会い出来た記念に…」

 思わずホゥとため息が出てしまうような仕草で白いカラーの花束を塔子に差し出した。

 突然の演出にさすがに塔子は一瞬戸惑った表情をしたがすぐに笑顔で受け取った。

「とても綺麗ね。ありがとう」

「塔子さんによくお似合いです」

(なんか…やりすぎじゃない?)

 ホストだから営業も兼ねてやっていると分かっていても目の前で他の女性に花を渡すところを見せられるのはさすがに気分が悪い。

「塔子だけ?私にはないのー陸?」

「そう言うんじゃないかと思って…」

 茶化す美咲に陸は苦笑いをしながら次の花束を手に取った。

 それは華やかな美咲にはぴったりの深いワインレッドのダリアだった。

「私はこういうイメージ?」

「えぇ…華麗、優雅の花言葉を持つこの黒蝶はまるで美咲さんの為にあるような花…かなと」

 まさに陸の独壇場だった。

「やはり陸さん…ですよねぇ」

「ほんと陸さんの花攻撃された俺達立場なしっすよ」

 響と悠斗は敵わないと笑った。

「こんな綺麗な花束なのにお二人が持つと花もただの引き立て役ですね。一層お二人が輝いてらっしゃる」

 誠の言葉に二人は花束を抱えながら微笑み合っている。

 さすがオーナーといった感じでツボはしっかりと押さえていてまだ若いホストはタジタジだった。

 どんな女性だって花を貰って嬉しくない人はいない。

 それもこんな風に自分の為に選んでくれたと言われたら一瞬で恋に落ちても不思議じゃない。

(私のもあるよね…どんな花かな)

 今はホストと客でも一緒に暮らす恋人がどんな花を選んでくれているのか気になる。

 麻衣はドキドキしながら陸の顔をチラッと見た。

 視線に気付いた陸は微笑んだ。

「何その心配そうな顔。そんな顔されると男は意地悪したくなるって知ってる?」

 意地悪な笑みを浮かべた陸がスタッフに目配せをした。

 奥からスタッフが持ってきた物を見て一同ポカンと口を開けた。


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