『-one-』
SWEETNESS P5
「おぉ〜!すごぉーい」
美咲だけが嬉しそうに拍手をしている。
呆気に取られているのは搭子と麻衣。
誠と響は呆れた顔をして陸はというと…口元に薄っすら笑みを浮かべていた。
「あーぁ。陸さんの作戦勝ちといったところですか」
響は呆れながら口元を拭っている悠斗を見上げた。
「まんまと嵌められましたね」
誠もやれやれと小さくため息を吐いた。
「どういうこと??」
事情の飲み込めていない麻衣が笑っている陸に聞いた。
「陸はあの酒を麻衣さんを助けた人だけが口に出来る特別な物だとわざと演出したんですよ。まーコロッと騙されるとは思わなかったですけどね」
代わりに答えたのは誠だった。
「そ…うなの?」
「あんなの一気したらせっかくの楽しい夜が台無しになるだろ?」
今までの王子口調からすっかりいつもの口調に戻ってしまっている。
悠斗をいじることにかけては陸をおいて右に出る者はきっといないと思う。
(悠斗くん…ごめんね?)
あまりにも悠斗が可愛そうに思えてきて麻衣は心の中で謝った。
「じゃあ…褒美のなくなってしまった俺は姫の隣を褒美にもらいましょうか?」
陸がウインクをして麻衣の隣に座る。
弾き出された悠斗は膨れっ面でスツールに腰掛けた。
(絶対最初からこのつもりだったよね?)
ようやく陸の真意が分かって麻衣は呆れながらも嬉しくて自然と口元が緩んだ。
「挨拶が遅れました。お久し振りですね、搭子さん」
陸が立ち上がり頭を下げた。
(お久し振り…って事は知ってるんだ)
「前よりもいい男になったんじゃない?」
「搭子さんは少し雰囲気が変わった?以前より柔らかい雰囲気がより塔子さんを輝かせてますね」
(うはっ…なんかやっぱり普通にこういう事言うんだね)
陸の口からはスラスラと言葉が出てくる。
搭子は口元に笑みを浮かべながらまんざらでもなさそうにしている。
「久し振りにおみえになっていると聞いたので…持ってきてくれる?」
陸は近くに立っていたスタッフに声を掛けた。
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