『-one-』

SWEETNESS P4


「最悪…何この展開」

 悠斗はがっくり肩を落としてソファにもたれた。

 助けられた麻衣は嬉しそうにクスクス笑っている。

「主役はやっぱり一番おいしいとこで登場が決まりだろ?姫…お怪我はありませんでしたか?」

 陸は麻衣の手を取ると膝を付き手の甲に唇を付けた。

 唇を付けたまま麻衣を見上げるその瞳は優しさで溢れている。

 麻衣はにっこり微笑んだ。

「大丈夫よ。ありがとう」

「もー麻衣さんまでー。これじゃあ俺が悪役じゃないっすか」

「では姫…助けた褒美を頂けますか?」

「ほ、褒美って…」

 陸はすっかり姫を助けた王子を気取っていた。

 服装も振る舞いもそれはまるで本物の王子みたいで麻衣はすっかり見惚れてしまった。

(ドキドキしてきちゃった…)

 それほど酒も飲んでいないはずなのに鼓動が早くなっている。

「ご褒美はリシャールよ」

 麻衣の代わりに美咲がグラスを指差しながら答えた。

 グラスになみなみと注がれたリシャールを見て陸は一瞬ギョッとした顔をしたがすぐ元の表情に戻った。

「私のようなものが頂いてもよろしいのですか?」

 少々わざとらしい感じで感嘆の声を上げた。

「で、でも…陸…」

(そんなたくさんストレートで飲んだりしたら…)

 麻衣は心配になってまだ添えられている陸の手をギュッと握った。

 陸はもう片方の手を麻衣の手の上に添えると微笑んだ。

「助けた褒美にと姫から頂ける特別なお酒です。私にとってこれ以上名誉なことはありません」

 そう言うと陸はグラスに手を伸ばした。

 だがグラスをすごい勢いで悠斗が横取りをする。

「俺だって…俺だってーー!!」

 悠斗は喉を鳴らしながら一気にグラスの中身を流し込んでいった。


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