『-one-』

SWEETNESS P2


「3番と5番でポッキー!」

 それはまるで女王様とでもいうべきオーラを放つ美咲が鼻歌交じりで言った。

「あ…私3番」

 手に持った割り箸を見つめながら麻衣が呟く。

 ギン!と目の色が変わった男が約一名。

 持っている割り箸を両手で握り締めて体を震わせている。

 全員の不思議そうな視線が彼に注がれた。

「ッヨッシャァァッ!!!」

 悠斗は両手を高く掲げて天を仰ぐと叫び声を上げた。

 誠と響は表情を変えずにタバコに火を点け、美咲は面白そうな顔を搭子は不思議そうな顔をしている。

 麻衣だけが何とも言いがたい表情をしていた。

「諦めたんじゃないんですか?悠斗じゃ敵うわけないんですよ」

 呆れた口調で響が呟いた。

 その言葉の真意は搭子を除く全員が知っている。

「それとこれとは別。それにこんなチャンスはもう二度とない!」

 悠斗は嬉々としながらポッキーを手に取った。

「わ、私も一気で許してもらおうっかなー」

 麻衣は笑いながらグラスに手を伸ばした。

 パシンッ−

 美咲がグラスを持とうとする麻衣の手を叩いた。

「却下!ポッキーくらいいいじゃない」

「誠さんはパス出来たのにー!」

「なーに言ってるの?今は私がお・う・さ・までしょ?」

 面白がっている美咲の笑顔。

(こんな時陸がいてくれたら…)

 今ここには居ない愛しい人の笑顔が頭に浮かんだ。

「麻衣さん、悠斗がどうしても嫌なら俺が悠斗の代わりをします。もちろん麻衣さんが困るような事はしませんから…。美咲さん、それなら構わないですよね?」

「ん〜まぁ…響くんが代わりになるならそれでもいっかなぁ〜」

「ちょ、ちょっと!響ー…余計な事言ってんなよぉ。それじゃあ俺が麻衣さんを困らせてるみたいだろ?

「実際…困った顔してますよ。ね、麻衣さん?」

 麻衣を挟んで悠斗と響が見えない火花を散らす。

「困ってるのは誰と…とかじゃないんだけどなぁ…」

 麻衣は遠慮がちに呟くが二人の耳には届いてないようだ。

「あーもう!俺は絶対やるっ!」

 悠斗が高らかに宣言すると麻衣の肩に手を置いた。


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