『-one-』

SWEETNESS P1


「キャハハッ!!」

「じゃあ1番と2番がキス〜!」

 平日のCLUB ONE店内。

 外は朝から降っている雨がまだ降り続いていた。

 そのせいか開店休業状態なのだがホール中央のテーブルでは王様ゲームをして盛り上がっている。

「俺1番!」

 悠斗は手をあげると期待を込めた視線を麻衣に向けた。

「誠、2番でしょ?」

 美咲が誠の手の中に握られた割り箸を強引に抜き取った。

 悠斗は目の前に出された割り箸を見てガックリうな垂れた後少し引き攣った顔で誠の表情を窺った。

 美咲相手ならいつものように舌打ちする誠だったが今日は申し訳なさそうな笑顔を浮かべる。

「搭子さん、一気でお許し頂けないでしょうか?」

 王様を引いた搭子に誠は頭を下げる。

「誠くんに頼まれた嫌とは言えないじゃない?」

 搭子はにっこり微笑んだ。

 誠の提案に一番ホッとした表情を浮かべた悠斗がグラス片手に立ち上がって一気に空にした。

 それに続いて誠もグラスを空ける。

「それにしてもほんと暇そうね?今日はもう閉めちゃったら?」

「そうしたい気持ちもあるんですが、陸が同伴の予定なのでそうもいかなくて」

 客のいない店内をグルリと見渡した美咲にオーナーの誠が答えた。

「店は閑古鳥でもさすが陸よね?」

 美咲は意味深な視線を麻衣に送ってフフッと笑う。

 気付いた麻衣も愛想笑いを返した。

(フゥ…どうしてそういう言い方するかなぁ?)

 テーブルには、麻衣、美咲、オーナーの誠、悠斗、響とここまでいつものメンバーで今さら陸との関係を隠す必要はなかった。

 だが麻衣は右隣に座る響の向こう側の女性をチラッと見た。

 美咲の友達で神谷搭子。初対面なのは麻衣だけで店には何度か足を運んでいるようだった。

 美咲の友達だから心配はいらないとは思ったが彼女がどこまで事情を知っているか分からない以上気をつけるにこしたことはない。

「じゃ〜次!次!」

 麻衣の左隣に座る悠斗が仕切って割り箸を集めた。


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