『-one-』
猛アタック P7
「……ぃ」
陸が口を開いて何かを伝えようとしているのを見て麻衣は慌てて立ち上がった。
「じゃあ…ゆっくり休んでね」
ボーッとしている陸に声を掛けると慌てて部屋を出ようとした。
(早く帰らなくちゃ…)
言いようのない危機感を感じる。
このままずっとここに居たらいけないと自分の心の奥で何かが警告してくる。
慌てて鞄を持つと部屋を出た。
「…衣、麻衣、麻衣…待って、麻衣っ」
部屋の中から必死に呼ぶ声が聞こえる。
(お願いだからそんな風に呼ばないで)
麻衣は聞きたくないと自分の耳を塞ぐ何度も何度も繰り返し呼ぶ声は麻衣の中へと入ってくる。
ガッターーン−
玄関で靴を履こうとした時に寝室から大きな音が聞こえた。
麻衣は慌てて部屋に戻る。
「何してるの!?」
部屋に入ると陸がベッドの横に倒れている。
涙が出そうになりながら陸を抱き起こすととても病人とは思えないような強さで抱きしめられた。
「麻衣…行かないで…」
「ねぇ…麻衣?」
掠れた声が耳元で囁く。
「何で電話に出ないの?嫌いになった?」
「麻衣ー俺の名前呼んでよ。声が聞きたいよ」
陸は何度も何度も麻衣の名前を呼んだ。
呼ばれる度に胸の奥が締め付けられて苦しくて涙が出そうになった。
麻衣はもうそうなってしまう原因に気付いていた。
「麻衣…会いたかった」
「麻衣…もう一度陸って呼んで…」
陸の腕が更に強く抱きしめる。
(陸…気付いてる?私も陸の事好きになってたんだよ…)
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