『-one-』

しっぽり外デート P4


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「美味い…」

 陸は和牛の炙り焼きを口に運び満足そうに頷いている。

 外で食べる時はいつもホスト仲間も一緒にわいわいと焼肉だったり回転すしだったりする。

 こんな風に二人でご飯を食べるのは久し振りだった。

 そのせいか浴衣のせいかは分からないが麻衣は自分の分も陸に差し出した。

「苦しい?帯…緩める?」

「あ…ううん。大丈夫だよ。それより…陸」

 麻衣は陸に酒を進める。

 今日はあんまり飲まないと最初から言っていた。

 日本酒を一合だけ頼んだがやはり飲み足りないらしくて二合追加注文した。

 お猪口に酒を注ぐ。

「どうしたの?」

 陸は注がれた酒を飲まずにジッと麻衣を見ている。

 黙ったままあまりにジッと見つめてくる陸に麻衣は居心地が悪そうに視線を逸らした。

「和服っていいよね。特に横から見るうなじって…色っぽい」

 酒を飲んでほんのりピンク色になったうなじを陸はうっとりとした表情で眺めて後れ毛を指で弄ぶ。

「なんか…若奥さんって感じ」

「じゃあ…陸が旦那さま?」

「え…あ…俺が旦那だよな。そう…だよな」

「どうしたの?」

 急にしどろもどろになったは陸はテーブルにお猪口を置くと頬杖をついて顔を横に向けてしまった。

「陸?」

「…しい」

 聞き取れない小さな声で陸が何か呟いた。

 麻衣はもう一度聞きなおした。

「恥ずかしい…。分かってても口にするとなんか照れる…」

 あの陸が本当に照れている。

 目元の辺りを少し赤く染め俯き髪の間から見える耳も赤くなっている。

「旦那さま?お酒飲まないんですか?」

 麻衣は陸のお猪口を右手で持ち左手をソッと添えて差し出した。

 差し出されたお猪口を陸はぎこちなく受け取ると一口で流し込んだ。

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