『-one-』

しっぽり外デート P3


「へぇ〜思ったより狭いんだ」

 カップル用の個室に案内された陸はグルッと見渡す。

「仕事とかで来ないの?」

「こんな所にワザワザ入りたくないよこの店なら一階で十分。こういうとこは麻衣とじゃなきゃ嫌だ」

 すぐ隣に座る麻衣の腰に手を回して頬にキスをする。

 さっきまでホストの時までクールな顔が消えもういつもの陸の表情をしている。

「浴衣…去年と違うね?美紀さんが持ってきてくれたってやつ?」

「去年の覚えてるの?」

「当たり前でしょ。あんなにエッチな浴衣忘れるわけない」

「浴衣がエッチなんじゃなくて…陸がエッチな事したんでしょ?」

 麻衣はメッと陸の鼻をつつく。

 陸は麻衣の指を掴むと顔を近づけた。

「間違えた…浴衣がエッチじゃなくて浴衣を着た麻衣がエッチだったんだ」

 反撃とばかりにニヤリと笑う。

 麻衣は去年の事を思い出して少し頬を染めた。

「去年の黒いのも良かったけど今年のもいいよね…。なんかすげぇ色っぽくて俺…マジでドキドキしてんだけど」

 陸は自分の左胸を抑えながらハァーとため息を吐く。

 その仕草に麻衣はクスッと笑った。

「ねぇ…陸?どうして今日わざわざ待ち合わせにしたの?」

 実は麻衣は午後から休みを取っていた。

 だから当然のように昼は陸とマンションで食べてのんびり過ごしていた。

 陸は少し早めに支度をするとじゃあ後でと出掛けた。

 麻衣もその後浴衣を着て出掛けたのでわざわざ別々に行く理由が分からなかった。

「待ち合わせってドキドキするじゃん。仕事帰りに待ち合わせしてご飯食べに行くって憧れない?」

「それで今日は…なんかサラリーマンみたいなの?」

「うん…まぁ…ホストっぽく見えない方が麻衣もいいかなぁと思って」

「私はあんまり気にならないけど…でも仕事帰りに浴衣…はないよね」

 真剣な表情で呟く麻衣に陸はプッと吹き出した。

「まぁ…でも…やっぱり麻衣を待ってる時間はすげぇ楽しい。こういうのってデートって感じするし」

 陸の言ってる事は麻衣にはすごく理解出来た。

 一緒に暮らすようになってから外でご飯を食べる事は減った。

 休みに出掛ける時も一緒に部屋を出て車に乗り一緒に帰って来る。

 今日は久し振りに雑踏の中にいる陸の姿を探して見つけた時は嬉しくて駆け出したほどだった。

「じゃあ…これからも待ち合わせデートする?」

「もちろん」

 陸はソッとキスをする。

 顔を離してもう一度キスしようとすると料理が運ばれてきた。


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