『-one-』
僕の可愛いモンスター P8
「麻衣、我慢出来る?」
陸は麻衣の体を支えながら立ち上がる。
今までどんなに飲んでも吐いた事は一度もなかっただけにさすがの陸も慌てる。
麻衣の体を支えながらトイレに向かっていると誠が陸のところへ来た。
「まだ客が少しいるから…スタッフ用で」
周りに聞こえないように耳打ちする。
いつも誠の気遣いには頭が下がる。
酔っ払った客の介抱は今までにもした事はあるがやはりそれが麻衣となると陸もホストの顔から恋人の顔へと戻ってしまう。
そんな所を客に見られるわけにはいかなかった。
陸は頷くとトイレへ急いだ。
個室の扉を閉めるのももどかしくそのままにして麻衣をしゃがませて便器の蓋を開ける。
陸は麻衣の後ろに立って背中をさすった。
「大丈夫?」
「んー…」
くぐもった声が聞こえる。
(やっぱり…酒は飲むなってキツク言わなきゃダメだな)
辛そうな麻衣を目にしてようやく陸は決心する。
「麻衣、我慢しなくていいから。出しちゃった方が楽になるよ」
唸るだけの麻衣に声を掛ける。
「今日ねぇー」
「うん」
「曲がるとこ間違っちゃってー」
「うん」
麻衣が便器に顔を向けながら話し始め陸は背中をさすりながら相槌を打つ。
「ウワァッ!」
トイレに入ってきたホストがびっくりして声を上げた。
うずくまる麻衣を見て固まっている。
「悪ぃ…気にすんな」
陸に言われると用を足してそそくさと出て行く。
(…扉閉めないとマズイな)
陸は扉を閉めようと麻衣から手を離して体を奥へとずらす。
「りーーくーーー」
「なーに?」
扉に手を掛けると呼ばれて返事をした。
麻衣が顔を上げてジッと陸の顔を見る。
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