『-one-』

僕の可愛いモンスター P4


 AM0:05

 店内に残る客はわずかになっていた。

 店の一番奥、VIP席ではないが他のテーブルから見えにくい位置に配置されているテーブルに麻衣と悠斗の姿がある。

 モンスター来店時の決まりとして必ずこの席に通す事になっている。

「のーど、乾きましたー!」

「はい、どーぞ」

 麻衣の前に差し出されたのはミネラルウォーター。

 決まりごと二つ目、酒は出さない。

 麻衣は酒を要求することなく出された水に口を付ける。

「こんばんは」

「んふふ…」

 そして真打ち登場で麻衣の機嫌は最高潮へ達する。

「後は…お願いします」

 悠斗は陸と入れ替わるようにして席を立つ。

 決まりごと三つ目、陸が来たら他のホストは退席する。

 悠斗はそのままスタッフルームへ戻る。

「フゥッ」

 上着を脱ぎながら肩の力を抜き小さく息を吐いた。

「お疲れ、今日も可愛かったな?」

「可愛いけど…俺マジで陸さん尊敬する、モンスター状態の麻衣さんを扱えるのはあの人しかいねぇって」

「なんかコツでもあんじゃね?今度聞いてみろよ」

「コツなんかないって。やっぱりアレだよ…愛だろ愛」

「間違いねー。ほんとあの二人見てると羨ましくなるよなぁ」

 悠斗と他のホスト達が言葉を交わす。

 陸と麻衣の関係はホスト達には周知の事実で家庭的で優しい麻衣の事を皆が気に入っていた。

「それで…モンスターって結局…」

 さっきの新人ホストは話題についていけずに声を掛ける。

「さっきの客、見ただろ?」

「あの…ご機嫌な客ですよね?」

「そうそう。麻衣さんっていって普段はほんと優しくて可愛くていい人で」

「料理も上手いし、この前もって来た差し入れのケーキなんて超美味かった!」

「ほろ酔いくらいまでは最高!」

「間違いないっ!」

 その場にいたホスト達が口々に麻衣について語る。

 異様な盛り上がりを見せ始める。

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