『-one-』

男の責任!? P19


 タクシーの中からずっと機嫌の良い陸はエレベーターの中で鼻歌を歌っている。

「どうしたの?」

「んふふー」

 さすがに気になった麻衣が何度理由を尋ねて満面の笑みを返されるだけで終始こんな感じだ。

「風呂入るでしょ?」

 珍しく自分から風呂の準備をする姿に麻衣はさすがにギョッとした。

 あんなに機嫌がいいなんてよっぽど嬉しい事があったのかな?

 まさか陸が妊娠と勘違いしてるとはこれっぽちも思っていない麻衣にはまったく理由が分からなかった。

 麻衣は荷物を片付けに寝室へ向った。

 服を脱ぎかけた麻衣が思い出したように鞄の中から紙袋を取り出した。

「いらなくなっちゃった」

 使うことはなかったけれど捨てるのももったいないかな。

 麻衣は悩んだあげく自分の引き出しの奥へとしまい込んだ。

 色々あってなんか疲れちゃったな…。

 麻衣は上着だけ脱ぐとベッドに横になった。

 疲れた体から力が抜けてまるで体が埋まっていくような感覚を感じた。

 ボーッとしているとだんだんと瞼が重くなり意識が遠のいた。

「…衣、麻衣?」

 ウトウトしていた麻衣の体を揺すりながら陸が声を掛けた。

「あ、ごめんね…。寝ちゃって…」

「風邪引いたら大変だよ。お風呂で温まって?」

 まだ寝惚けてボンヤリしている麻衣を陸は背中に手を回して優しく抱き起こした。 

 いつもとは違う陸の優しい表情に胸をときめかせた麻衣が陸の首に手を回した。

 目を閉じて唇を重ねた。

 遠慮がちに口を開いた麻衣に応えるように陸もまた口を開いて受け止める。

 下唇を軽く甘噛みしながら何度も唇を重ねた。

「麻衣、風呂入らないと…」

 唇を離して額をコツンとつけた。

 けれど麻衣は体を離さず再び唇を重ねた。

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