『-one-』

男の責任!? P15


 ここまで嬉しそうな顔をされると誠まで手離しで祝福をしようという気になってしまう。

「でもお前さ…仕事どーすんの?」

 誠の一番気になるのはそこだった。

 陸の友人として先輩として親代わりとして陸が本当の意味での家族を作るのは心から喜べる。

 だが誠は経営者であり陸は一番の稼ぎ頭なのだ。

「仕事続けるってのは…無理ですか?」

 さっきまでの表情とは違って真剣な眼差しで誠を見ていた。

 さすがに誠はすぐに言葉が出てこない。

「子持ちのホストか?お前そんなの…」

「竜さん…麻衣の親父さんはやってきた…」

「あ、あぁ…そうだけど」

 まいったなぁ…。

 二人が一緒に暮らしているのだからこういう時が来るかもしれないなとは考えた事はあったけどまさか本当に来るとは…。

 ホストを続けてくれるのは嬉しい反面それが一番いい選択なのかと疑問が残る。

「本当だったらもっとマシな仕事に就いた方が麻衣も安心出来ると思うんですけど…」

 陸もいっぱしの男になったんだと思わせる表情をしていた。

「ただ金銭的な面で苦労かけたりさせたくないんです。今の仕事ならそういう心配ないし…」

「だけどそれはお前一人で決める事じゃないだろ?」

「まぁ…そうなんですけど…」

 俺から見てればまだまだガキだけれどコイツなりに真剣に自分の好きな女を守って生きていく事を考えているのは分かる。

 いつの間にかでかくなりやがって…。

「とりあえずそれが本当かどうか麻衣ちゃんに確認して…話はそれからだ。いいな?」

「うぃっす!」

 陸がおどけながら返事を返した。

 ピリッピリピリッ!

 誠の携帯がメールの着信を知らせた。

 携帯を開いてメールを確認する誠の顔が意味ありげな笑みを浮かべた。

「陸、今日はお得意様が来るぞ。」

「美咲さんっすか?」

「あぁ…それと…」

 それ以上は言葉は必要なかった。

 陸の顔が嬉しそうに綻ぶのを見て誠はやれやれとため息を吐いた。

「じゃあ俺はそろそろ…」

 ようやく陸が腰を上げて誠の部屋を出て行こうとする。

「なぁ…おい」

 ドアの前に立った陸の後ろ姿に誠が声を掛けて呼び止めた。

「子供とか…そんなに嬉しいか?」

「当たり前じゃないですか。好きになった女が俺の子供産んでくれるなんてそんな嬉しい事ないっすよ」

 振り返った陸が胸を張って答えた。

「そうか」

 一言だけ返すと陸は上機嫌で手を振りながら部屋を出て行った。

 一人になった部屋で誠はポリポリと頭を掻いた。

「子供とか…嫌いそうだな」

 誠は苦笑いを浮かべながら呟いた。

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