『-one-』

男の責任!? P13


 その日の夕方なぜか麻衣は美咲のオフィスに居た。

 昼休みになると美咲から夜のお誘いの電話が掛かってきた。

 けれど今日こそは検査をしたいと思っていた麻衣はやんわりと断りをいれたのだけれど…。

「私の誘いを断ろうっていうの?仕事終わったら私のオフィスまで来てよっ」

 と、一歩的に押し切られてしまった。

 美咲とは長い付き合いの麻衣は仕方がないと諦めて定時で仕事を終えると真っ直ぐ美咲のオフィスへと向かった。

「もうちょっとで片付くから適当に座ってて」

 パソコンに向って仕事をしている姿は女の私から見てもかっこいいと思わず見惚れてしまう。

 適当に腰掛けて近くにあった雑誌に手を伸ばした。

 表紙を見ていた麻衣は気になる見出しに目が止まる。

 “女の幸せ!?仕事・結婚・出産”

 タイムリーな話題で嫌だなぁ…。でも気になるから少し読んで見ようかな。

 ページをめくり読み進めていくうちにだんだんと気が滅入ってくる。

 【いい年して出来ちゃった結婚→退職なんて絶対嫌。焦って失敗??なんて思われそう】

 これにはさすがに落ち込んだ。私っていい年の部類に入るよね??

「はぁーーーっ」

「何、真剣に読んでんのよ」

 大きくため息を吐いた麻衣に気が付いた美咲が雑誌を取り上げる。

 記事に目を走らせた美咲は呆れた顔をして雑誌を返す。

「既に人妻みたいなもんでしょ。あんたの場合は」

「ひ、人妻って!!私達はただ一緒に暮らしてるだけで…」

「はいはい、これで子供でも出来たら…」

「こ、子供はまだっ…」

 子供という言葉に過剰に反応して大声を出してしまった麻衣が慌てて口を閉じた。

 だが美咲がそんな麻衣の動揺を見逃すはずもなくすかさず詰め寄った。

「なーんか気になる反応よねぇ?」

 探るような視線に耐え切れずに視線を反らしてしまった。

 昔から本当に勘だけはいいんだよね…。

 後ろめたさに目を泳がせる麻衣の顔を覗きこむように美咲が腰を屈めた。

「私に隠し事なんて無理なんだから吐いちゃいなさい」

「べ、別に隠し事なんて…」

 麻衣が美咲の尋問に耐えられなくなるのは時間の問題だった。


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