『-one-』

男の責任!? P11


 今日一日考えていた事が現実味を帯びてきた。

 俺…父親になるんだ。

 いや、まだ妊娠してるって決まったわけじゃないけど。

 ぼんやりと立ったままだった陸は電気を消してクローゼットを閉めた。

 麻衣の隣へと潜り込む。

 肘を付きながら麻衣の寝顔を眺めた。

 いつかはこんな日が来ればいいと漠然と考えていた。

 いつも隣には当たり前のように麻衣が居て、そのうちに自分達のミニチュアみたいな子供が出来て…。

 両親を早くに亡くしていたし家族には強い憧れがある。

 麻衣と出会って結婚したいと思ってそれがより強い物になっていた。

 だけどここまでハッキリと現実だと感じた事はない。

 麻衣と一緒に居られるのが幸せだし、今は仕事も楽しくて仕方がない。

 その俺が父親に…なるんだ。

 そう思った途端急に不安が込み上げてくる。

 俺みたいなのが子供なんか育てられるのかな…。

 まだホストやってて夢も叶えられてない半人前みたいな男が人の親になんかなっていいのかな。

 ホスト辞めなきゃだよな…。

「んっ…」

 麻衣が寝返りを打って陸の体に擦り寄った。

 とても幸せそうな寝顔をしている。

「麻衣…」

 急に愛しさが込み上げてきて頭の下に腕を差し込んで体を抱きしめた。

 俺がビビってる場合じゃないじゃん。

 麻衣も生まれてくる子も俺が守らなくちゃいけないんだ。

 さっきまで弱気になっていた自分に喝を入れる。

 その夜、陸はいつもよりきつく麻衣を抱きしめながら眠りについた。


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