『-one-』

男の責任!? P8


 えぇーーーっ。

 どうしよう…なんでこういう事はすぐに気が付くの??

 部屋に入って来てそのままいつもの癖でベッドの上にバッグを置きっぱなしにした事を後悔した。

 当然その隣りは薬局の紙袋も置きっぱなしだ。

 陸が紙袋から視線を外して立ち尽くす麻衣の方へと振り返った。

「麻衣?」

「え?あ、あの…か、風邪薬。」

 麻衣は必死に誤魔化した。

 陸は戻って来て麻衣の前に立つとジィッと麻衣の顔を見た。

 な、何だろう…。

 もしかして気が付いたの?

 陸ってば変な所で勘がいいから…。

 やっぱり隠すよりちゃんと言った方がいいのかな。

 色んな事がいっぺんに頭をよぎる。

「んー熱はないみたいだね」

 目を泳がせている麻衣に気付かない陸は麻衣の前髪をかき上げてコツンと額を合わせた。

 ソォッと陸の顔を盗み見ると目を閉じている。

 麻衣の動揺には気が付いていないようだった。

「暖かくして早目に寝るんだよ。俺も遅くならないようにするからね」

 顔を離した陸が心配そうな顔で麻衣の頬に手を添えて撫でた。

「う、うん…」

 麻衣はぎこちなく頷いた。

 言い出せなくなってしまってだけでなく風邪でもないのに余計な心配をさせて麻衣の心苦しさが更に増した。

 陸は後ろ髪を引かれながらも仕事へ向う為に慌しく部屋を出て行った。

 一人残された部屋の中で麻衣はドッと脱力感に襲われベッドに座り込んだ。

「はぁ…なんか疲れたなぁ」

 帰ったらすぐにでも検査しようと思っていた決意もあっさりと砕かれてしまった。

 明日にしよう…。

 麻衣は紙袋をバッグの中へと押し込んだ。


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