『-one-』

男の責任!? P2


 陸にそんな出来事が起きる少し前、麻衣の勤務先の事務所では。

「麻衣先輩ー」

 後輩の女の子が青い顔をしながら麻衣に声を掛けた。

「どうしたの?」

 小さな事務所の中には麻衣を含めて女子社員が四人いる。

 専務や営業はほとんど出掛けていて昼間仕事を仕切っているのは年長者の麻衣だった。

「痛み止めってないですかぁ?」

「痛み止め?どーしたの?」

 側に歩み寄って顔を覗きこむ。

 椅子に座っていたけれど辛そうに前屈みになっていた。

「生理痛がひどくて…」

「ちょっと、待ってね」

 自分の机に戻ると引き出しを開けて小さな缶から痛み止めの錠剤を取り出した。

 手際よく水を用意し薬を手の平の上に乗せるとコップを持たせた。

「少しお腹周り温かくした方がいいからこれ巻いてて」

 麻衣は自分のひざ掛けを掛けてあげる。

「麻衣さんってほんと気が利きますよねー」

「うんうん、いい奥さんになれそう!」

「おだてたってダメ!仕事しなさーい」

 仕事の手を止めている二人に声を掛ける。

 と言っても小さな鉄工所に事務員四人は多いくらいで、午後からは大抵四人でお喋りをして過ぎていく。

「麻衣先輩、すみません…」

「謝る事じゃないでしょ」

 申し訳なさそうに謝る後輩に笑顔を返した。

 こういう辛さは男の人には分からないからちょうど誰も居なくて良かった。

 誰かが話せば全員に聞こえるほど小さな事務所で自分達四人だけな事にホッとした。

 後輩達は自分よりずっと若いけどいつも姉のように慕ってくれている。

 麻衣もまた何かと相談をしてくる後輩達の面倒を喜んで見ていた。

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