『-one-』
小さな嵐 P25
「ごめん、ごめんって」
麻衣の腕を掴まえてようやく立ち止まらせた。
「俺が言いすぎたから。ね?麻衣、こっち向いて?」
陸が回り込んで麻衣の肩に手を置いて心配そうに顔を覗きこんだ。
顔を上げた麻衣はまだ怒っている。
「麻ー衣?ごめんって」
謝ってみても一向に機嫌が直る気配がない。
「慌てて止めるほど籍入れるの嫌だった?」
怒った顔のままの麻衣の言葉の意味が分からなかった。
あれ…?
俺がしつこく言ったから怒ってんじゃないのか?
「麻衣?」
「一緒に住んでるし…紙だけの問題かもだけど…喜んでくれるかと思った…」
恨めしそうな麻衣の言い方に陸はようやく意味が分かった。
「違う、違うって!俺だって今すぐにだって麻衣を俺の奥さんにしたいよ?」
陸の言葉にもまだ信じられないって顔をしている。
どうしてそんなに可愛いかなぁ…。
不満そうな顔の麻衣が上目遣いで自分を見上げているのを見て思わず顔がにやけそうになるのを我慢した。
本当に今すぐにでも結婚したいほど好きだし離したくない。
その気持ちには一点の曇りもない。
だけど…俺としては色々思う事があるわけで…。
「俺のワガママ聞いてくれる?」
「いつも聞いてる」
ご機嫌斜めの麻衣が低い声で返事をした。
「ちょっと真面目な話するから…ね?」
陸の真剣な顔を見た麻衣はそれ以上何も言わずに頷いた。
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