『-one-』
小さな嵐 P22
俺って情けねぇ…。
コンビニ行って来ると言ってからもう1時間過ぎていた。
公園のベンチに座った陸はさっきから煙草を吸っていた。
ベンチの上にはプリンがいくつか入ったコンビニの袋が置いてある。
麻衣の顔見たら聞けないよ。
別れ話なんてされたら俺立ち直れない…もうそれは嫌って程思い知らされてる。
「はぁーーーーっ」
大きなため息を吐いて煙草を吸い終わると次の煙草へ手を伸ばした。
「なーにしてるの?」
麻衣の声が聞こえて慌てて顔を上げると幻でも夢でもなく麻衣が目の前に立っていた。
「珍しいね。煙草吸ってるとこ久しぶりに見た。」
陸は手にした煙草を片付けた。
麻衣と付き合うようになってから麻衣の前では吸わないようにしていた、もちろんマンションの中でも吸っていない。
煙草の匂いが麻衣に移ってしまうのが嫌だったから。
そんな理由は麻衣は知らないんだろうけど…。
「あ…プリン!もーいくつ買ったの?」
コンビニの袋の中を覗き込んで麻衣が楽しそうに笑いながら隣に腰掛けた。
聞かないの?
違う…俺が逃げてちゃダメなんだ。
「麻衣、あのさ…」
次の言葉を待っている麻衣が陸の顔を覗きこんだ。
こんなに不安な俺とは違って麻衣の顔はニコニコ笑っている。
「俺の事好き?」
「好きだよ?」
「一番好き?」
「うん、一番好き」
麻衣は迷うことなく陸の質問に答えた。
それでも心の不安は取り除けなくてさらに質問を続けた。
「俺が年下で地方のホストでも…?」
不安で頼りない子供のような瞳をしている。
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