『-one-』

小さな嵐 P21


 マンションに帰った後も気まずい空気の中麻衣は荷物の片づけをしていた。

 ソファに腰掛けた陸がチラチラと麻衣の動きを目で追った。

 麻衣…どうすんのかな?

 俺じゃなくてアイツ選ぶのかな?

 麻衣の両親からも信用されてて麻衣の事を理解してて俺みたいに年下じゃないし…。

 考えれば考えるほど不安になった。

「陸ー、夕飯食べたい物あるー?」

 キッチンの方からいつもと変わらない明るい声が聞こえて来た。

「何でもいいよー」

 陸もいつもと変わらない調子で返事をする。
 
 胸の奥はこんなにざわついているのに…。

 陸は立ち上がってキッチンへ向った。

 こんな事してたらいつまで経っても不安は拭えないのかもしれない。

 誤魔化しや隠し事はもう二度としないって決めた。

「麻衣、あのさ…」

 キッチンの入り口に立った陸が中にいる麻衣に声を掛けた。

 麻衣は実家から貰って来た物を整理してる最中だった。

「んー?食べたい物あった?」

「そーじゃないけどさ」

 麻衣は手を休める事なく動いている。

 その姿を見ていると今朝の事は夢でも見ていたんじゃないかと思う。

「お母ちゃんがおかず持たせてくれたからコレ食べようか?」

 麻衣が容器のフタを開けて陸に見せた。

「うん、いいよ」

 陸は笑って頷いた。

 聞けない、やっぱり聞けない…。

 麻衣を失いたくないんだ。

「ちょっとコンビニ行って来るけど、欲しい物ある?」

「んー?プリン食べたいな」

「分かった。行って来るね」

「気をつけてね」

 財布と鍵を持った陸を麻衣は笑顔で見送った。


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