『-one-』

小さな嵐 P19


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「麻衣は俺のことしか見てねぇんだよ!お前が入り込むスキはない」

 陸は奏太の手を払いのけて睨みつけた。

 声を荒げた陸を見て奏太は苦笑いを浮かべた。

「若いねぇ…」

 払われた手を振りながらヘラヘラと笑っている。

「なんだと」

「どうせ麻衣の事強引に口説き落としたんだろ。アイツは押しに弱いとこあるからな」

 陸は拳を握り締めた。

 こんな奴に全てを見透かされているのがたまらなく悔しい。

「お前と俺にはどうやっても埋められない差があるんだよ。分かるか?」

 言葉が出なくて下唇を噛んだ。

「時間。麻衣と一緒に過ごしてきた時間はお前がどうあがこうが埋められない」

 そんな事で余裕があると?

 たかがそんな事で俺はこんな奴に負けるとでも?

 ふざけんなよ。

 たかがガキの頃から一緒に居ただけのくせに、勝ったとでも思ってるのかよ。

「そんな過去の話は関係ない」

 歳の差だろうが幼なじみだろうが関係ない。

 俺が麻衣を想う気持ちは誰にも負けてない。

「女にとって小さい頃の出来事は過去じゃなくて大切な思い出って事、分からないのか?」

 過去じゃなくて思い出…。

「お前それでもホスト?まぁいーや…」

 すれ違いざまに奏太は陸の肩をグイッと掴んで顔を近付けた。

「仕事も女も、お前は俺には勝てねぇよ。」

 奏太はそのまま歩いて行ってしまった。

 “仕事も女も…”

 俺は…負ける?

 そんなはずがあるわけない…。


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