『-one-』

小さな嵐 P18


 これじゃあ、あの時と何も変わらない。

 同じ事を繰り返すのはもう嫌だ、それなのに麻衣に聞く事も出来ない。

 麻衣から言って欲しい。

 そう思う俺はズルイのか?

 カチャン−

 車にもたれていた陸が音のした方を向くと隣の家から出て来た奏太と目が合った。

「ども。これから東京帰るんですよ」

 奏太は大きめのバックを肩から下げていた。

「ちょっと、いいですか?」

 陸は奏太に声を掛けた。

 このままじゃダメだ…。
 
 黙って見ているだけなんて俺には出来ないし、相手が誰だろうと麻衣は俺のだとはっきりさせるんだ。

 二人は少し歩いて近くの公園に来ていた。

「麻衣にちょっかいかけるのは止めてもらえませんか?」

 先に話を切り出したのは陸だった。

 だが奏太は気にする様子もなく陸の言葉を聞いても余裕の表情で笑みを浮かべている。

「選ぶのは麻衣だ。俺でもお前でもない。」

 麻衣が自分を選ぶとでも思ってるのか?

 ふざけんなよっ。

「余計な事を言わないで下さいって言ってるんです」

「そんな事で麻衣の気持ちが揺れるのが怖いのか?」

 奏太の言葉に陸は言葉も出なかった。

 そうだ…コイツの言うとおりだ。

 俺は怖いんだ。

 だからこそ麻衣を自分の見える所に常に置いておきたい。

 そんな事を思ってしまう。

「その程度の男なら心配いらねぇか」

 奏太は鼻先で笑った。

「麻衣は渡さない」

 絶対に誰にも渡さない。

「今はいいよ。その代わりこれ以上麻衣に変な虫が付かないように目を光らせておけよ。それくらいは出来んだろ?」

 奏太は笑いながら陸の肩をポンポンと叩いた。


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