『-one-』

小さな嵐 P15


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 奏ちゃん…?

 一体何言ってるの?

 麻衣は目の前に座る奏太の顔を見つめた。

「どうしてか分かる?竜さんの仕事を手伝えるようにだよ」

 奏太は穏やかな顔で微笑んでいる。

 まさか奏太に告白されるなんて思っていなかった麻衣はまだ何が起こっているのか分からなかった。

「俺は麻衣にふさわしい男になる。必ずNo.1になってここに戻ってくる」

 10年前とは違う男の顔。

 真剣な眼差しが奏太の強い気持ちを物語っている。

 だからこそ麻衣には言葉が出なかった。

「今すぐ俺と付き合って欲しいなんて言わない。ただ…もう少し待っててくれないか…?」

「奏…ちゃん?」

 目の前の奏太から目が離せない。

「俺がNo.1になって戻って来るまでアイツと一緒になるのを待っててくれないか?」

 これがあの奏ちゃん…?

 もう奏ちゃんなんて呼ぶのがおかしいくらい男らしくなって、自分の意思とは関係なく心臓が動き始める。

「あの時の言葉叶えてやりたくてここまで来た。俺の嫁さんになれよ」

 ずっと好きだった。

 その気持ちは高校を卒業して離れ離れになってからもしばらく続いたけれど、時の流れと一緒にいつのまにかなくなった。

 そして他の人と恋をした。

 こうやってまた再会するまでその存在さえも忘れていたのに…。

 私には陸がいる。

 あんなに愛してくれる人がいる。

 それなのに…どうして…。

 こんなに胸が痛いんだろう。

「俺にも隣に立つチャンスを欲しい」

 奏太の言葉の一つ一つが麻衣の心の中をかき乱した。


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