『-one-』

小さな嵐 P13


「麻衣っ!」

 玄関を飛び出すと既に母親の美紀が出迎えていた。

「奏ちゃん、重かったでしょ?大丈夫?」

 な、何やってんだよっ!!

 他の男と一緒に居るどころか麻衣は奏太の背中で眠っていた。

「おいっ、麻衣、麻衣!起きろっ!」

 酔い潰れて寝てしまっている麻衣の頬を叩いて起こそうとした。

 人がこんなに心配してんのになんで他の男におんぶされてんだよっ!!

「…んっ」

 頬を叩くと小さな声を上げて目が覚めたと思ったら今度は背中に頬擦りをしながら甘えている。

「麻衣、着いたぞ」

「んっ…んんー」

 奏太が声を掛けると麻衣は素直に返事をした。
 
 イラッ…

「奏ちゃーん!お腹空いたー」

「あんだけ飲んで起きたらそれか?」

 奏太は笑いながら麻衣を下に下ろすと頭を撫でて笑った。

「飲んでしかない!ラーメン!ラーメン食べたーい」

「ったく酒弱いくせに一人前に飲みやがって」

 それは俺のセリフだ。

 麻衣の体を支えるのも麻衣が甘えていいのも俺のはずだろ?

「おいおい…彼氏がすっごい顔で睨んでんぞ」

 奏太が陸の方をチラッと見て麻衣に声を掛けるがその顔には微笑みさえ浮かべている。

「あ、陸も一緒にラーメン食べに行こっ、すっごいおいしいんだから」

 陸の胸のうちなんて気付く事もなく能天気な笑顔で陸の袖を引っ張っている。

「今日はもう遅いから、今度にしような」

 陸は出来るだけ気持ちを抑えて麻衣に声を掛けた。

「えー!ラーメンッ!」

 酔っ払ってるせいでワガママになっている麻衣が頬を膨らませている。

「麻衣、いい加減に…」

 我慢出来ずに陸が麻衣の手を掴もうとすると奏太がスッと二人の間に割って入った。

 奏太は麻衣の肩に手を置いて身を屈めた。

「麻衣ー、わがまま言うな。今日はもう寝ろ、いいな?」

 麻衣は素直に頷いた。

 麻衣…?
 
 何でだよ…そこは俺の場所じゃないのか?


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