『-one-』

小さな嵐 P12


 キィーッ、バタン。

 情けない顔見せられないからな。

 タクシーから降りた陸は俯いていた顔を上げて短く息を吐くと両手で頬をパンッと叩いて家に入った。

「お帰りなさーい、陸くん」

 玄関に入るとまだ起きていた美紀がすぐに出迎えた。

「ただいまっす。えっと…麻衣はもう寝ました?」

「奏ちゃん達と飲みに出掛けてまだ帰ってないわよ?」

 何…だって?飲みに行くなんて聞いてない。

 陸は慌てて携帯を取り出した。

 メールは届いてない電話も鳴ってない、もうすぐ1時過ぎるってのに一体なにやってんだよ!

「あ、あの…どこへ行ったか分かりますか?」

「もう心配症ねぇ!奏ちゃんが一緒にいれば大丈夫よ」

 美紀は陸の心配など気にも留めずに笑いながら背中を叩いた。

 何だよ、奏ちゃん、奏ちゃんって…。

 陸はやり切れないを抑えながら2階の麻衣の部屋へと上がった。

 時計の秒針の音が耳障りなぐらい静かな部屋で陸はベッドに腰掛けて携帯を手から離さずジッと待っていた。

 一体いつ帰って来る?

 もうすぐ2時になるってのに何の連絡もなしで男と飲みに?幼なじみってだけでどうしてそんなに信頼される?

 “アイツになら俺の店を任せられる”
 “奏ちゃんが一緒にいれば大丈夫”

 二人の言葉がさっきから何度も何度も頭の中をぐるぐる回っている。

 俺は麻衣の恋人で結婚するって…。

 いまだに何の反応もない携帯をギュッと握り締めると立ち上がった。

「くそッ!」

 これ以上は待てないと陸が部屋を出ようとした時に外から話し声が聞こえ陸は慌てて階段を駆け下りた。


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