『-one-』

小さな嵐 P6


「ガキの頃お前ここで“奏ちゃんのお嫁さんになるー”って言ったよなぁ?」

 思い出すのも恥ずかしい子供の頃の思い出。

 小学2年になってクラスが分かれてしまった事がショックでここで泣いてたら奏ちゃんが迎えに来てくれて…。

「あれは奏ちゃんが言わせたんでしょ?」

「ばーか、泣きながら抱きついて来たのは誰だよ」

 “ずっと一緒に居たいなら俺のお嫁さんになるしかないんだよ”って先に奏ちゃんが言ったくせに。

「昔話を懐かしむなんて奏ちゃんも年取ったんだねー?」

 妙に気恥ずかしくて話を茶化した麻衣を奏太が目を細めて眺めている。

「麻衣だって同じだけ年取ってんだからな」

 奏太は麻衣の頭を小突いて笑っていると不思議そうな顔で見ている麻衣の視線に気が付いた。

「どした?」

「今、麻衣って言った?」

 今更だけど名前を呼び捨てにされるのは妙にくすぐったい。

「30にもなって“ちゃん”付けは無理があるだろーよ」

「えー私は永遠に18歳なのにぃ」

 ニヤリと笑う奏太に負けじと麻衣はすました顔して答えた。

「どの口が言うんだ!これかっ、この口かっ!」

 奏太は麻衣を掴まえるとヘッドロックをして麻衣の口を両頬から片手で挟みこみながらふざけあった。

「奏ちゃんっ!ギブ、ギブッ!」

 麻衣は奏太の腕をバンバン叩いて涙目で訴えると、奏太は首を締め付けていた腕の力を緩めた。

 奏ちゃん…?

 手は緩めたもののまだ奏太の腕は麻衣を離さずまるで後ろから抱きしめられているみたい。

 本当ならこの腕をすぐにふりほどくはずなのに何だか振りほどけずにそのままジッとしていた。

「奏ちゃん…?ど…うした?」

 急に黙りこんでしまった奏太に声を掛けた。

「お前…太った?」

「…っでぇ!」

 自分の中に芽生えた思わぬ感情は奏太の言葉ですぐにかき消された。

 せっかくの気分が台無し…麻衣は後ろに立つ奏太の足を思いっきり踏みつけた。


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