『-one-』

小さな嵐 P5


 そこからは街が一望出来た。

 昔よりは近代的な建物が多くなったような感じはするけど、やっぱり昔のイメージそのままだった。

「懐かしいねー!」

 麻衣と奏太は高台にある公園へ来ていた。

 特に何があるわけでもない普通の公園だけれどそこからは自分達の住んでいる所が一望出来る。

「帰って来たら絶対ココに来たいって思ったんだよなー!」

 奏太は手摺りにもたれながら気持ち良さそうに大きくノビをした。

「よく二人で来たよねー」

 麻衣もまた奏太の隣に立って嬉しそうに街を見ている。

「ガキん頃から何かあると決まってここに来て泣いてたよな?」

「せっかく気分良かったのに水差さないでよねー!」

 台無しとばかりに麻衣は首を横に振って奏太の横顔を眺めた。

 肩に付くまで伸びた髪が風でなびくと陽の光を受けてキラキラと輝いて見える。

 やっぱり格好いいよね…。

 高校に入って急に背が伸びた奏太の周りにはいつも女の子達がいて麻衣には急に奏太が遠く感じた。

 今はまたあの頃とは違う雰囲気だけど接していても何の違和感もなくすんなり入っていけた。

 私も大人になったのかな?

 幼い頃に抱いた恋心は決して相手に伝える事はなくきれいな思い出のまま麻衣の心の中にしまわれた。

 何度もこの公園で奏太に告白しようと思ったけど、その度に二人の関係が壊れてしまうのが怖くて出来なかったのを覚えてる。

「なぁ…覚えてるかぁ?」

 ぼんやりしていた麻衣は奏太に声を掛けられるとドキッとしながら顔をあげた。

 はぁーっ、びっくりしたぁ。

 昔の甘酸っぱい想いを思い出してしまったせいか麻衣の顔はほんのりと赤みを帯びていた。


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