『-one-』
小さな嵐 P3
麻衣が着替えを済ませてリビングへ降りて行くとTシャツにジーンズに着替えた奏太がソファに寝転がっていた。
「奏ちゃーん」
「おぅ!朝飯食いに行こうぜ!奢ってやるよ」
奏太は起き上がると勢いよく立ち上がるとニカッと笑った。
「ちぇーっ、俺はアレが食べたかったのにー」
「しつこい。もう時間が時間なんだからしょうがないじゃん」
もう11時を過ぎて朝のメニューが終わっていて散々レジでごねていた奏太はブツブツ言いながらも大口でハンバーガーにかぶりつくのを麻衣は呆れながら見た。
「それにしても、朝の格好何なの?まるでホストじゃん」
「だってホストだもん」
奏太は指に付いたソースを嘗めながらシレッと答えた。
「はぁっ!?」
「だーかーら、ホストなの」
麻衣の驚く顔も気にも留めずに2個目のハンバーガーに手を伸ばしている。
「ちょっとぉ!なんで!学校の先生になるんだーって言ってたじゃん!」
麻衣は奏太からハンバーガーを取り上げるとキッと睨みつけた。
「一応教員免許は取ったよ?でもさー大学時代にしたホストのバイトが妙にはまちゃったってゆーか、俺の天職って感じ?」
取り上げられた事にもめげずにポテトに手を伸ばすとまるで勝ち誇ったように胸を張っている。
「信じられないっ。わざわざ東京の大学まで行ったのに!」
麻衣は怒りながら持っていたハンバーガーを奏太の口の中へ突っ込んだ。
あまりの怒りっぷりに奏太は苦笑いを浮かべた。
「ごめんな?応援してくれたのにな、鼻ぺちゃ」
奏太は手を伸ばすと麻衣の鼻を摘まんでベッと舌を出した。
「ぷっ!久々に奏ちゃんの鼻ぺちゃって聞いたー」
二人は会わなかった時間なんてまるでなかったようにあっという間に打ち解けた。
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