『-one-』
零れた想い P77
陸は奈津美の言葉に心の中でため息を吐いた。
客に俺に本命がいるとバレたらこうなる事くらい予想はしていた。
でも奈津美ちゃんはそういう事する子じゃないって思ってたのに。
「別に構わないよ。でもそれで彼女が傷つくような事があったら俺は絶対に許しはしないから」
「…ッ」
奈津美の完敗だった。
「ごめんなさい。そんな事出来ないよ…本命がいるくせにあんなに女の子に優しくするホストなんて貴重な存在だし…」
「ありがとう」
「あはは…立ち直ったらまた飲みに行くからその時はサービスしてよね!」
奈津美は涙を流していたけれど精一杯明るく振舞って電話を切った。
陸は電話が切れた事を確認すると電源を切って携帯を閉じて横に置くと麻衣を両手で抱きしめた。
「麻衣ごめんね。顔見せて…?」
ゆっくり顔を上げた麻衣を見て陸は泣いていないのを確認するとホッと胸を撫で下ろした。
「ふんッ」
えっ?
陸は目と耳を疑った。
目の前にいる麻衣は頬を膨らませて自分の事を睨みつけている。
あれ…?
怒ってるの?
「私がいるのに…」
「えっ?」
ボソボソと言った言葉が聞き取れなくて陸が聞き返すと麻衣は顔を赤らめた。
「今度からはその場で断って!」
拗ねたような顔で麻衣が怒った。
すごい進歩だ!
陸は麻衣の言葉に感動を覚えて力いっぱい抱きしめた。
「り、陸っ…苦しいってば…」
「やだっ!」
陸は麻衣を抱きしめたままベッドに寝転んだ。
何度かキスをするうちに麻衣の機嫌が直り二人は再び甘い時間へ戻っていく。
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